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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


すると、部屋の中には平助君と山南さんに相馬君の姿があった。
どうやらお話の最中だったのようで、私は慌てて部屋から出ようとする。

「すみません。お話の最中だったんですね……直ぐに出ます」
「……構わねえ、ここにいろ」

ぶっきらぼうな土方さんの言葉で引き止められ、私はゆっくりとその場に座った。
何の話をしていたのだろうと思いながら、彼らへと視線を向ければ、山南さんが顔を厳しいものにさせているのに気がつく。

(どうしたんだろう……山南さん)

なんだか部屋の空気も重たく感じる。
そう感じていれば、山南さんの鋭い言葉が耳に聞こえてきた。

「……羅刹隊の増強を中止せよ、とは、一体どういうことです?」
「そのままの意味だ。今後、羅刹隊の隊士を増やすつもりはねえ。今いる人員で何とかしてくれ」
「その命令には、納得できません。今の新選組の兵力を考えると、羅刹隊の増強は急務のはずです。……先程、藤堂君から聞きました。永倉君と原田君が脱退してしまったと。彼らの脱退は、相当の痛手です。新たな隊士を募ったところで、所詮は烏合の衆。敵が近づいてくれば、すぐに逃げ出してしまう」

山南さんの眉間にはどんどん深い皺が刻まれいた。
突然の羅刹隊増強の中止にかなり納得が行っていないようで、機嫌もかなり悪くなっているのが分かる。

「そんな者たちに期待をかけるより、我々羅刹隊の力をもっと生かすべきではないですか?」
「……確かに兵力を増強することだけ考えるなら、羅刹隊を強化するのが一番手っ取り早いだろうな」
「ならば、どうして……!」
「だが、羅刹には重大な欠点がある。……これは、信頼できる筋から得た情報だ」

土方さんが何を言おうとしているのか直ぐに気が付いた。
あの日、天霧と遭遇した時に彼から言われたあの言葉なのだろう。

「……羅刹の力の源は、その人間の寿命だ。つまり力を使えば使うほど、この先生きていられる時間が短くなっちまう」
「何ですって……!?」
「羅刹の力を使えば、寿命が短くなる……」

土方さんの言葉に山南さんも相馬君もかなり驚いた表情をしていた。
山南さんの眼鏡の向こうにある冷徹な瞳が驚愕に見開き、やがてあてもなく足元へと落ち、相馬君は驚愕していたけれども直ぐに眉をひそめてから俯く。

「つまり、やむ得ねえ時を除いて、羅刹の力はなるべく使わねえに越したことはねえ」
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