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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


天霧の言う通りだ。
数度しか会ってはいないけれども、風間は気位が高く人間と羅刹を底辺の存在として見ている。
その人間と羅刹である土方さんから屈辱を受けている風間は、きっと土方さんを追いかけて来るはず。

(雪辱を晴らすために……)

鳥羽伏見での、あの風間の怒り狂った姿を思い出して思わず背筋が冷えた。
あれは鬼である私が見ても、僅かな恐怖を感じさせるものだ。

「……君が勝つ可能性は、低い。ですがそれでも、守りたい何かがあるというのなら、守る為のその力、大切に使ってください」

土方さんは何も言わない。
ただ、天霧の事を鋭い目付きで見つめていた。

「……そしてもう一つ、君に伝えておかなければならないことがあります。羅刹の力は、決して神仏からの授かり物ではない。人並み以上の腕力、敏捷性、そして驚異的な回復力ーー。それは全て、君の身体に秘められたもの……、本来数十年かけて使い果たしてゆくはずの力を、借りているに過ぎません」
「……え」

天霧の言葉に、目を見開かせた。
驚愕的な言葉に、目を見開かせたまま言葉を発することも出来ずに立ち尽くしてしまう。

だって、数十年かけて使い果たしてゆくはずの力。
それはつまり、自らの生命を削っているという意味にもなるのだから。

「……力を使えば使うほど、残りの寿命が短くなっちまうってことか?」
「そういうことです」
「なるほど。……話がうますぎると思ったんだ。ま、薩長と殺し合いやってんのに、残りの寿命もクソもねえからな。それぐらい、どうってことねえよ」
「……では、私はもう行きます」

天霧はそれだけを言うと、その場を立ち去ろうとした。
だがそれを土方さんが呼び止める。

「ちょっと待ってくれ。ひとつ、聞かせてほしいんだ」
「何でしょう?」
「俺を見逃しちまっていいのか?このまま放って置いたら、俺はきっとあの風間って奴を殺すことになるぜ」
「……君に倒されるならば、その程度の男だということでしょう。我ら鬼は、情で繋がっているわけではない」

そう言い捨てると、天霧はそのまま夜の森に姿を消して行った。
天霧の後ろ姿を見送りながら、私は自身の右手首へと視線を向けて少しだけさする。

(……治ってる)

折れていた骨は既に治っていた。
痛みも消えていて、腹部の痛みも既に消えている事に気がつくと小さく息を吐く。
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