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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「言った、でしょう……死ねないのって。私は、死ねないことになっているの……。誓ったの、土方さんと……」

小さく呟きながら、口の中に広がった血を勢いよく地面へと吐き出した。
そして手の甲で口元を脱ぐうと足元に落ちている刀を広い、天霧へと構える。

「いいでしょう。ならば、今しばらくはお付き合い致します」

刀を構えてから、私は勢いよく地面を蹴り上げる。
そして刀を下から持ち上げるように、天霧へと斬りかかるとその切っ先が天霧の横腹をかすめた。

「ーーむっ!?」

だけども、かすめただけ。
深く斬れる前に天霧は避けてしまい、刀は空を切り裂いていた。

「っ!」

一度交わされたからと言って、諦めるわけじゃない。
私は何度も何度も天霧へと斬り掛かるが、掠めるだけで切り裂くことが出来なかった。
そしてついには、刀は掠める事はなくなってしまう。

まるで、水のような動き。
形のない緩やかな水の様な動きの天霧に、刀で触れることができない。

「これで、終わりです」

そう呟かれたかと思えば、蹴りが私の右手へと振り落とされていた。
鋭い痛みが右手に響き渡り、その痛みで刀を握ることが出来ずに落としてしまう。

拾わなければと思ったが、痛さで刀を拾うことさえできない。
それどころか手を動かすことさえ出来なかった。

(……折れてる)

右手首が折れているのだと直ぐに気が付いた。
鬼の治癒能力なら、骨折だって治るけれども私は純血じゃないから、直ぐに治るわけじゃない。

「……勝負あったようですね。悪く思わないでください。すぐ楽になれるよう、一撃であの世へ送ってあげましょう」
「……っ」

死なないって決めたのに、近藤さんを守って、生き延びると、必ず会うと誓ったのに。
私はどうやらここまでのようで、その場に膝をついて座ってしまった。

(……生きなきゃって、思ったのになあ)

だけど、もうそれは無理だ。
折れた手はすぐには治らない、力の差もとてつもなくある。
私は天霧には勝つことはできない。

(……ごめんなさい、土方さん。誓い、守れなくて)

目尻が熱くなり、瞳から涙が一粒だけ落ちる。
そしてゆっくりと瞳を閉じた時だった。

「……おい、どうしてそこで諦めちまうんだ?新選組の隊士なら、最後の最後まで生き延びて敵を出し抜くことだけ考えろ」
「……え」
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