• テキストサイズ

君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


そう言ったけれども、私の言葉は近藤さんの耳には入っていないようだった。
辛そうな表情をしながら、ぼそぼそと呟き続ける。

「大将が俺じゃなくて別の誰かだったら……、あいつらも、死なずに済んだかもしれんな」
「それは、貴方に着いてきた隊士の方々への冒涜です!」
「……雪村君」
「隊士の方々は、近藤さんに着いてきたんです。貴方が大将だから、貴方の為にと戦っている方々もいたんです!それなのに、貴方がそんなことを言えば戦って死んでしまった隊士の方々への冒涜じゃないですか!それは、貴方が言ってはいけないんです!」

彼の言葉に、つい頭に来て私は思わず怒鳴ってしまった。
そんな私に近藤さんは目を見開かせて驚いてた顔をしてから、俯いてしまう。

近藤さんが落ち込んでしまっているのは、痛いほどに分かっている。
だけども、彼の言葉はどうしても許せなかった……だって近藤さんだからこそ着いてきた人達はたくさんいるのだ。
彼のためならばと命を捧げていた人もいるのに、これだと彼らに対してあまりにも失礼だから。
そう思っている時だった。

「……おい、そこにいるのは誰だ?」

茂みの外から、聞きなれない軍人口調の声が聞こえてきて思わず身構えた。
そして葉の隙間から覗き見れば、異国風の軍服が目に入る。

明らかに新選組の隊士でもなければ、幕府側とも思えない軍服。
確実に、敵側の人間と思えるものだった。

「我々の声が聞こえんのか?今、確かに物音と声が聞こえたぞ」

その言葉に思わず私は『しまった……』と苦い表情をした。
恐らく、足音と私の声で気付かれたんだと思えば斎藤さんが私の肩に手を乗せて小さな声で囁いてくる。

「俺が、時間を稼ぐ。あんたは局長を連れて逃げろ。追々、相馬達が合流するかもしれん」
「……分かりました。すみません、斎藤さん」

斎藤さんは小さく頷いてから走り出した。
その姿を見送ってから、私は口を閉ざして近藤さんの手を引いてから歩き出す。
一刻も早く、近藤さんを連れてこの山を降りないとと少しだけ焦ってしまう。

(近くに、敵がいるかもしれない。見つかる前に、早く山を降りないと……)

焦りながらも、私は近藤さんを引っ張って山道を駆け下りた。
そんな時、私たちの目の前に誰かが立ちはだかり、一瞬相馬君か千鶴かと思ったけれども、直ぐに月明かりで顔が見えて目を見開かせる。
/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp