第11章 乞い求む【土方歳三編】
すると、土方さんも自分の太刀を抜くとむき出しになった刃の峰同士をぶつける。
そしてぶつかった所から、金属のぶつかる音が聞こえたが、それは心地好く響く音だった。
「……金打を打つ、といってな、武士が誓いを立てる時はこうするもんなんだと」
「そう、なんですね……」
「もっとも、俺もおまえも正式には武士じゃねえから、所詮、真似事だがな」
「でも、どうして今、これを……?」
少しだけ戸惑ったように聞けば、土方さんが小さく微笑みながら私の目を見つめたいた。
「これは、証だ。俺は、必ず戻ってくる。おまえも生き延びて俺に会うっていう証を、今立てたんだ。だから、信じて待っていろ。死なずな」
彼の言葉に瞳を少しだけ揺らす。
武士に憧れ続けた彼にとって、この儀式はとても神聖なもののはず。
ならば私も、その気持ちに誠心誠意応えなくてはいけない。
必ず、この誓いを守らなければいけないのだ。
「……はい、分かりました。この誓い、必ず果たします。絶対に近藤さんを守り、生き延びて貴方と会います」
「ああ」
土方さんはそうして、江戸に駐屯している増援部隊を呼びに向かった。
だがその後、甲府鎮撫隊はじりじりと敵に包囲され始めたのである。
近藤さんは、自分たちはあくまでも幕臣として、甲府城周辺を守っているだけだも説明したのだが……。
先日入隊したばかりの隊士の方が、勝手に【新選組だ】と名乗りを上げて、敵方へと発砲してしまったのだ。
これをきっかけとして、戦闘が始まった。
だけど、相手の主力は様式化された土佐藩の部隊。
幕府から頂いた銃や大砲は敵に届かず、一方的に新選組が攻撃される形となったのだ。
そんな状況に、近藤さんもやむなく撤退命令を下し、じりじり後退することになったけど……。
「近藤さん!撤退しましょう、このままでは新選組は全滅してしまいます!」
「し、しかし、隊士たちがまだ戦っているというのに、我々だけが逃げるわけには……!」
「近藤さんのお気持ちも分かります。でも、ここに残っていれば近藤さんまでが死んでしまかもしれないんですよ!?でも、貴方が生きていれば負けてもまた立て直せる。そう、土方さんも仰っていました!」
撤退することに渋る近藤さんにそう言うと、私は彼の手を掴んでから歩き出した。
そして、千鶴と相馬君への方へと向かう。
「相馬君、千鶴!」
