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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


当初、二百人程だった隊士の方々の半分以上が脱走してしまい、百人程度までに減ってしまったのだ。
その事態もあり、永倉さんや原田さんは撤退するべきだと主張したけれども、近藤さんはそれに頷かなかった。

近藤さんは、ここに陣を敷いてあくまでも徹底抗戦するとのこと。
幕府から武器に投資を与えられているのに、何もせずに引き返す事は出来ないとのことだった。

「……とりあえず俺は、江戸に駐屯してる増援部隊を呼んで来る。ここで、負け戦するわけにはいかねえ。隊士には、この後援軍が到着すると伝えておいてくれ。……これ以上脱走されちゃ、かなわねえ」
「……御意」

土方さんの命を受けた斎藤さんは、直ぐに隊士の方々の元へと走る。
その背中を見送った土方さんは、私の方へと振り返った。

「おまえは、姉と一緒に誰かと江戸まで落ちろ。ここは戦場になる。少しでも安全な場所に逃げるに越したことはねえ」
「嫌です。私は、ここに残ります」
「……雪村」

私の言葉に土方さんが眉間に皺を寄せた。
だけども、私はここから逃げるつもりは全くない。

「皆さん方が戦っているのに、自分だけ安全な場所に逃げる訳にはいきません。千鶴だって、そう言いますよ。それに、大して役には立ちませんが、ここで近藤さんを守ってみせます」
「……どうやって守るつもりだ?少しは刀は使えるが、おまえごときの腕じゃ、何の戦力にもならねえじゃねえか」
「戦うことでは、戦力にはならないのは自分でもよく分かっています。でも、盾にならなれます。それに私は鬼ですから、少しの怪我なら直ぐに治ります」
「何で、そこまで必死になる?誰もそんな命令、下しちゃいねえじゃねえか」
「差し出がましい事を言っているのは、分かっています。でも今、近藤さんを死なせるわけにはいきませんでしょう?それにもう……守られるだけなのは嫌なんです」

守られるだけだと、また井上さんのような事になってしまうかもしれない。
それだけはどうしても嫌なのもあるけれど、近藤さんは新選組にとってとても大切な人。

もし、江戸に戻ってる最中に近藤さんの身に何かあればと思えば顔が強ばってしまう。
それに千鶴だってきっと江戸に戻ることを良しとはしない。

(誰かがまた死ぬなんて、考えたくない……)

土方さんは私の言葉を聞いてから、暫く何か言いたげに私を見下ろしていた。
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