
第11章 乞い求む【土方歳三編】

「そういえば……。お前の姉と相馬は最近距離が近い気がするが……そういう仲なのか?」
「あ、やっぱり土方さんもそう思ってしまいます?でも、まだそういう仲じゃないんですよ」
最近だが、原田さんや平助君にも聞かれたのだ。
千鶴と相馬君はそういう仲になったのか……と何度も。
でも二人はまだ恋仲という関係ではなく、微妙な距離感を保っている。
傍から見るとじれったい。
何度もじれったい気分になったか……そう思いながら、私は思わず笑ってしまう。
「多分、お互い想いあってると思うんです。だけど、それをお互い気付いているかどうかは分かりませんけどね」
「……良いのか?姉を取られちまっても。お前、前は姉に誰かが近づいたら番犬如く威嚇してただろう」
「ば、番犬……!?」
「威嚇して近寄らせないようにしてただろうが。あれを番犬と言わなくて、なんて言うんだ?」
土方さんの言葉に、私は言葉を詰まらせてしまう。
確かに周りから何度も【番犬】と呼ばれていたし、思い返せばそう言われたも仕方ない事はしていた。
「まあ、寂しいとは思いましたよ。でも、千鶴に好きな人が出来て、あの子を想ってくれる人が出来て嬉しくもあるんです。それに相馬君になら、千鶴を任せても大丈夫だと思いますから……。あ、終わりましたよ、土方さん」
髪も綺麗に切り終わり、私は彼の肩にかかった髪の毛を払っていく。
すると、土方さんは自分の髪の毛に触れてから小さく笑った。
「軽いな……」
「土方さん、結構な長さでしたからね。これだけ切れば軽く感じますよね」
土方さんは髪の毛を暫く触れてから、私の方へと振り返り、そんな彼を見た私はまた目を見開かせてしまう。
髪の毛を切っただけで、なんとなく印象が変わっているし、見慣れないせいか違和感を少しだけ感じてしまった。
だけど、髪の毛が短いのも土方さんによく似合っている。
ちょっと前と印象が変わって、幼く見えるような気がするなと思っていれば、彼は突然驚く質問を投げかけてきた。
「お前は、想い人はいるのか?」
「…………え!?な、なんですか、突然!?」
「お前ぐらいの年頃なら、想い人がいてもおかしくはねえだろ。で、いるのか?」
「……えっと……」
まさかこんな質問をされるとは思わず、私は思わず狼狽えながら口ごもってしまう。
だって想い人である本人にこんな質問されるとは思わなかった。
