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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


ゆっくりと、土方さんの髪に触れてみるとかなり触り心地が良いことに気が付く。
絹のように滑らかで綺麗な髪質であり、女である私も羨んでしまうほど。

(なんだか、切るの勿体ない……)

そう思いながらも、私はゆっくりと鋏で彼の髪の毛を切っていった。
鋏を動かす度に、はらりはらりと髪の毛が落ちていく。

「あの、土方さん」
「なんだ?」
「なるべく短くと言ってましたが、肩辺りまで切りますか?それとも首より上ぐらいまでか……」
「そうだな……。首より上ぐらいで頼む」
「分かりました」

ゆっくりと失敗しないようにと、鋏を動かしていく。
徐々に土方さんの髪の毛は短くなっていき、切り終えてしまえば、後ろ姿を見ても土方さんだと気付かない姿になっていた。

「髪の毛を櫛で少し梳いても良いですか?長さを揃えたいので」
「構わねえ。というか、櫛持ってんのか?」
「持ってますよ。私ので申し訳ありませんが……」

そう言いながら懐から櫛を取り出し、土方さんの髪の毛を梳いていく。
長さを調節するのに鋏を動かしてから切ってという作業をしながら、私は思わず呟いてしまった。

「やっぱり、勿体ない……」
「ん?勿体ないって何がだ?」
「……その、土方さんの髪の毛が短くなってしまうのが」
「なんだお前、俺は髪の毛が長い方が良いのか?」
「良いというか……。その、土方さんの長い髪の毛って黒い毛の犬の尻尾というか、狼の尻尾みたいで……嫌いじゃないなって」

後ろ姿を見る度、彼の揺れる長い髪の毛がまるで犬のような狼の尻尾のように思えた。
機嫌が悪そうに歩いてる時は、髪の毛がよく揺れていて、機嫌がいい時は緩やかに揺れている。
それでなんとなく土方さんの機嫌が分かる時があった。

まるで、犬のような狼の尻尾。
そんな風に思っていたのと、見慣れた物が消えてしまうのはなんだか寂しくて勿体ないように思えてしまったのだ。

「俺の髪を、犬か狼の尻尾……ねえ?そんなこと言うのはお前ぐらいだな」
「あっ!すみません、私……生意気なことを」
「まあ、壬生狼なんざ言われてたから……犬でも狼とか呼ばれてもおかしくはねえけどな。だが、尻尾か……」

土方さんは喉をくつくと鳴らしながら笑っていた。
最近は、難しそうな表情をしたり険しい表情をしていたから、久しぶりに彼の笑顔を見た気がして、私は思わず嬉しくなった。
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