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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


私の言葉を理解した土方さんは、地図から顔を上げてこちらへと視線を投げてから説明をしてくれた。

「前に、千姫とかいう女が忠告に来ただろ?羅刹隊が、辻斬りをしてやがるって」
「……はい」
「俺も正直、山南さんの仕業じゃねえかとにらんでるんだ」

彼の言葉に目を見開かせた。
何となく、私も【もしかして】とは思っていたけれども、彼も同じことを思っていたなんて。

「今んとこ、羅刹隊は貴重な戦力だ。血を得る為に、江戸の人間を斬って回るなんて真似を許すわけにゃいかねえ。それに鳥羽伏見の時は敵方が銀の銃弾を使ってやがったせいで、羅刹隊が役立たずになっちまったからな」
「……そういえば、そうでしたね」

理由は分かっていないけれども、銀の銃弾で負った怪我は羅刹の治癒能力では治らないのだ。
不死身とも呼べる羅刹隊の身体は、銀の銃弾に呆気なく壊されてしまい、何人もの羅刹が死んでいる。

あの時、山南さんはかなり焦っていた。
不死身とも呼べる最強の部隊が意図も容易く、崩壊させられてしまったのだから。

「切り抜ける方法が見つかるまで、山南さんには留守番しててもらう。……平助は、その見張りだな。後は、再起の為の武器調達もしてもらわなきゃならねえ」
「再起、ですか……?」

彼の言葉は、まるで今回の戦いは敗北してしまうと言っているようなもの。
それに驚いていれば、土方さんは渋い表情をしていた。

「……多分、次も苦しい戦いになる。本当なら、おまえを……お前ら姉妹を連れて行くわけにゃいかねえんだが、ここに残しておけば、またあの風間とかいう野郎が乗り込んで来るだろうしな。おまえも連れて行くが、くれぐれも危険な真似はするんじゃねえぞ。必ず俺の指示に従え。いいな」
「はい。私、そんなに危険な真似をしそうですか?念押するように言いますけど……」

彼の言葉に苦笑を浮かべてしまう。
すると土方さんは私を睨むような視線で見てきてから、ため息を吐く。

「何処の誰だ?俺が、生きて戻れって言ったのに俺の見えねえ所で死のうとしたのは」
「……そう、でしたね」
「絶対に危険な真似はするな。俺の見えねえ所で勝手に、死のうとするんじゃねえぞ」

彼の言葉に私は何も言えずに頷いた。
これ以上彼に余計な心配をかけないように、少しでもお役に立てるようにしないと。
私は静かにそう誓った。
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