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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


土方さんの声は落ち着いていた。
いつもの冷静な声で、永倉さん達の方へと視線を向けて話を続ける。

「それに、勝安房守殿の意向についてだが……、いくら戦嫌いとはいえ、避けられねえ局面があるってことぐらいはわかってるはずだぜ。何せ、この戦で幕府が負けちまえば、幕臣は全員、食い扶持を無くしちまうんだからな。俺たちを負かしちゃしねえだろ」
「……ま、確かにそれも一理あるけどよ」

土方さんに言われると、永倉さんもそれ以上は反論出来ないらしい。
気まずそうな表情をしながらも、先程までの険悪な雰囲気ではなかった。

そんな中だった。
話し合いは幹部と相馬君と野村君だけだったので、その場には山南さんと平助君もいて、静かに話を聞いていた山南さんが穏やかな笑みを浮かべて言葉をかける。

「では我々は、甲府の山に先回りし、夜襲の準備をしておいた方がよさそうですね」
「今回は、羅刹隊を出動させねえ。ここで待機してもらう」

だが、土方さんは山南さんの言葉を良しとしなかった。
まさかの言葉に山南さんは珍しく目を見開かせて、驚愕した表情を顕にする。

「……それは、何故です?」
「幕府からの増援が来た時、あんたらの姿を見られるのはまずい。それに甲府城には、他の藩の奴らも多く詰めてるからな。存在を公にしちまったら、隠密部隊の意味がねえだろ?」
「ですが……」
「まだ戦ら始まったばっかなんだし功を焦る必要はねえって、山南さん」

声が少し荒らげ出した山南さんを宥めるように、平助君はそう言った。
そして、彼は言葉を言い終わった後に土方さんへと目配せする。
恐らく何か、事前に話し合いの段取りをつけてあったのだろう。

「よし、それでは解散!出立までは間があるから、各自、体調を整えておいてくれ!」

その後、幹部の方々は各々部屋へと戻ってから、部下の隊士の方々に会議で決まった内容を伝えていた。
そんな中で、残っていた土方さんは部屋の中でおびただしい量の書類や地図を確かめている。

(……コンを詰めすぎてる)

そう思いながら、私はお盆にお茶が入った湯呑みを載せてから彼の横に座り、お茶を近くに置いた。

「……土方さん、お茶をどうぞ」
「ああ、すまねえな」
「……良かったんですか?」
「ん?何がだ」
「今回は、厳しい戦になりそうなんですよね?それなのに、羅刹隊を連れて行かなくて」
「……ああ、それか」
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