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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


今回のお役目に当たって、幕府から近藤さんは若年寄格、土方さんは寄合席格という身分を頂いたと聞いた。
その事に近藤さんはとても喜んでいて、隊士の方々もそれを喜ぶ人達もいる。
だけど、そうじゃない人も中にはいた。

「……なあ、近藤さん。その甲府を守れって話を持ってきたのは、どこの誰だ?」
「勝安房守殿だが……、それがどうかしたのか?」
「大の戦嫌いで有名らしいな。そんな人が、なんで俺たちに大砲やら軍資金を気前良く出してくれるんだ?」
「……そもそも徳川の殿様自体が、新政府軍に従う気満々らしいしな。勝なんとかさんも、同じ意向なんじゃねえのか」

疑いが篭った言葉を発する、永倉さんと原田さんの言葉に近藤さんは難しい顔になった。
三人共穏やかな雰囲気ではなく、さっきまでの穏やかな空気が一気に変わってしまう。

やがて、少し考える素振りを見せていた近藤さんだが、腕組みをして、胸を反らせながら永倉さんたちに言い放った。

「永倉君、原田君、これは幕府直々の命令なんだぞ。確かに戦況が芳しくない為、今は慶喜公も恭順なさっているがーー、もし我々が甲府城を守りきれば幕府側に勝算ありとみて、戦に本腰を入れてくださるかもしれん」

近藤さんはまるで子供に言い聞かせるような声色で、二人に言葉を投げかけていた。

「それに、勝てる勝てないの問題ではない。御上が我々を、甲府に守るに足る部隊だと認めてくれているんだぞ。ならば全力で応えるのが、武士の本懐というものだろう。そうじゃないかね、永倉君」
「……その言い方、やめてくれねえか。俺は新選組幹部ではあるが、あんたの家来になったつもりはねえんだからな」

永倉さんの言葉が荒々しくなっていた。
場が険悪な雰囲気になり始める中、原田さんがそれまで静かに話を聞いていた斎藤さんへと話題をふる。

「……斎藤、おまえはどう思ってるんだ?」
「俺は、局長と副長の意見に従う」

彼の言葉で、次は土方さんの方へと皆が視線を向けていた。
その視線に彼は居心地悪そうな表情もするわけでもなく、何時もの冷静な表情。

土方さんは何と言うのだろうか。
その場にいる隊士の方々は、土方さんの言葉を待っているかのような雰囲気を出していた。

「……とりあえず、新政府軍との戦いに備えて隊士を増やそう。甲府城を押さえたら、幕府からも増援が来るはずだ」
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