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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「では、俺もついて行きます」
「いや……相馬はここに居てくれ。何かあった時に、千尋と千鶴を守ってくれ」
「……わかりました」
「よろしくね、平助君。そういえば……土方さんはまだ外出から戻ってきてない?」
「いや、夕方頃に戻ってきたはずだけど、ずっと部屋にこもりっきりだぜ」
「……そう、なんだ」

またお部屋で仕事をされているのかな。
そう思いながら、私は手にある薬包紙へと視線を向けてから数個の薬包紙を懐に入れた。

「私、土方さんの様子を見てくるね。ついでにこれ、渡せたら渡そうと思う」
「わかった」
「これは、相馬君の分だから」

私は相馬君に薬包紙を渡してから、三人に挨拶をしてから釜屋の中へと足を踏み入れた。
まだ土方さんは羅刹となって日は浅いから、吸血衝動は出ていないかもしれない。

(だけど、吸血衝動が絶対出ていないとは言えないよね)

少し不安に思いながらも、土方さんの部屋の前に辿り着いた。
部屋からは明かりが見えているから、平助君の言う通り部屋にこもりっきりなのだろう。

「土方さん、いらっしゃいますか?お渡ししたいものがあるんですが……」

ふすま越しに声をかけるけれども、返事がない。
もしかしたらいないのかなと思った時だった。

「くっ、う……、ぐ……、くっ……!」

部屋の中から、押し殺すような苦悶の声が聞こえてきた。

「土方さん……!?土方さん、ここ開けますよ!」

慌ててふすまを開けて、私は部屋の中へと飛び込んだ。
土方さんは奥の文机に向かったまま、苦しそうに蹲っている。
額からは脂汗が滴り落ちていて、食いしばった歯からは苦しそうに呻き声が漏れ聞こえていた。

「土方さん!大丈夫ですか!?」

慌てて駆け寄り、背中に手を添えると土方さんは苦しそうに顔を歪ませながら私へと視線を向けた。

「ば、馬鹿野郎、大声を出すんじゃねえ……!」
「そんな事、言ってる場合じゃないでしょう!?」

土方さんの髪は真っ白になっていて、瞳は赤く染っていて羅刹化していた。
その姿に唖然としながらも、彼の様子を見て直ぐにこれが吸血衝動なんだと理解する。

苦しそうに呻く声、羅刹化した姿。
瞳の奥は何か物欲しそうに揺れていて、私は彼の瞳を見て理解しながらも唖然とした。

「こんなもん、直ぐに治まるに決まってんじゃねえか……。くだらねえことで騒ぎ立てるな……!」
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