第11章 乞い求む【土方歳三編】
数年もの間、人の出入りがなかったせいか家の中には分厚い埃が積もっていて酷い状態だった。
少し歩くだけで埃が舞ってしまい、三人で咳き込んでしまう。
慌てて千鶴と一緒にふすまを開けたりとして、埃が外に出るようにした。
これだけでも少しはマシになったけれども、やっぱり人がいないと酷い状態になってしまう。
「羅刹の資料ってどこにあるんだろう」
「……手当り次第、探さなきゃいけないよね」
取り敢えずと、資料の山に積もった埃を軽く払いながら開いてみる。
どの資料にも細かく走り書きがしてあり、内容を知るのに時間がかかってしまいそう。
「三人で、とりあえず頑張ろう」
「そうですね」
「分担で資料を読もうか」
そうして、私達三人はそれぞれ資料を開いて羅刹についての書かれているのを探していった。
だけどそう簡単に見つかるものじゃなかった。
「ふう、これも違ったみたい……」
「これも、違うね……」
「これも違いますね……」
三人同時にため息をつきながら、手に持っていた資料を床へと置いた。
そもそもたった一日で、三人いるからと言ってこの膨大な資料に目を通せると思ったのが間違いなのかもしれない。
(でも、ここで諦めるわけにはいけない……)
父様は家にいる時も研究していたはず。
きっと、何処かに手がかりのある資料があるはず。
土方さんや平助君に山南さんに相馬君……羅刹となっている方々の為にも探し出さなければ。
再び気合いを入れて、違う資料に手を伸ばして開いてみた時だ。
ひらりと資料から挟まれていた紙切れが床に落ちた。
「……薬の製法?」
落ちた紙切れを拾えば、そこには薬の製法について書かれていた。
そして紙切れには【羅刹】という字があり、思わず目を見開かせる。
「……これ!」
「どうしたの、千尋?」
「千鶴、これに羅刹たちが血に狂い始めた時に衝動を抑える薬について書かれてるの」
「……え!?」
「ほ、本当ですか!?」
私は驚きながらも、紙に書かれているものを読み進めていく。
どうやら父様は、私と千鶴が京に行ってる間に入れ違いのように江戸に戻っていたらしい。
そして、この家で羅刹の為の薬を調合していたのだ。
(これは、その時に使っていた走り書きなんだ……)
改めて、薬の超合法に目を通す。
材料を見れば、名前は知っているのばかりだ。
