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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「本当ですか?江戸に戻ってきたからというもの、獅子奮迅の働きぶりですね」
「はい·····。お休みになってほしいとお願いしても、聞いてくれないんです。いつ、寝ていらっしゃるのか·····」

睡眠をしっかり取れているのかも心配だけども、一番心配なのは羅刹の身で昼間も働いている事。
羅刹となった者は昼間に動くのは苦痛だと、山南さんが言っていたのに土方さんは昼間もずっと働き通しなのだ。

でも、土方さんからは苦痛を感じない。
顔色がたまに悪いと思う時はあるけれども、苦痛に顔を歪ませていたりとするのは見た事ないのだ。

「……島田さん。島田さんも大丈夫ですか?少しお痩せになったようにしますが」
「ん、まあ……、山崎君が亡くなって、仕事が増えましたからね。彼の置き土産ですから、多少きつくても何とかこなさないと。……それに、あれだけ働いていらっしゃる副長を見ていたら、俺一人休むなんて到底できませんよ」
「そうですよね……」

土方さんが休まれていないのだから、何かをしなければ。
その思いは私も同じだけども、私は島田さんと違って土方さんのお役に立てることは本当に少ない。

あの日、鳥羽伏見の戦いの時に井上さんは言ってた。
自分は刀としては新選組の役に立てないけど、きっと何かできることなあるばすだ……と。

(私が、新選組や土方さんの為に何かできることはあるのかな……)

井上さんや山崎さんが亡くなってから、ずっとずっと考え続けていた。
だけどまだ、その答えは全然見つからない。

「それじゃ、俺は他にも用事があるので、出かけてきます」
「……はい。お気を付けて、行ってらっしゃいませ」
「そうそう、最近、辻斬りが増えているらしいですからね。夜の外出は、控えてください」
「……はい」

島田さんは大きな身体を揺らしながら、歩いて行ってしまった。
彼の背中は京にいた時よりも少し、小さくなったような気がする。

そして、その晩のこと。
広間には人気は無く、私はそこで一人で繕い物をしていた。
千鶴は他の雑用をしていて、最近は千鶴と一緒にいるのが減った気がする。

(こっちに来て、人が減ったからなのか忙しくなってるもんね·····。仕事を分担したりしてるし、お互いに土方さんと相馬君を気にかけてるから二人でいる事が減ったかも)

そう思いながら繕い物をしていれば、広間の襖がゆっくり開いた。
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