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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「……今日こそは何としても話を聞いてもらわなきゃ、始まらねえ。ちと、出かけてくる」

部屋の扉が勢いよく開いたかと思えば、土方さんは私に視線を向けてくる。

「ちと、出かけてくる。遅くなるかもしれねえから夕飯は俺の分は要らねえ」
「え、あ……はい」

慌てた様子で土方さんは廊下を早足で歩いて行ってしまった。
さっき見えた彼の顔はかなり顔色が悪かったけれども、大丈夫なのだろうかと不安になる。

不安に思いながらも、私は土方さんの部屋の中にいる八郎お兄さんへと視線を向ける。
彼はどこか申し訳なさそうな、そんな複雑そうな表情をしていた。

「八郎お兄さん、何かあったんですか……?」
「今日、面会する予定の幕臣の方に、約束を反故にされそうになっていたので知らせにきたんです」
「……反故に?」

土方さんは江戸に戻ってからすぐ、薩長と再び戦う為にと幕臣の方々に連日面談を申し込んでいるという話は私も聞いていた。
だけど、その面談を反故にされてしまいそうというのは……。

「幕臣の方々は……幕府側はこれ以上の戦いを望んではいないという事ですか?」
「何しろ、総大将の慶喜公が新政府軍に恭順してしまっていますからね。僕も、不用意な行動を慎むようにと上から言われていますし。こういう時は、思うままに行動できるトシさんたちのことが少し羨ましいです」

八郎お兄さんの言葉に、私は眉を下げながら俯いた。
本当に慶喜公はこれ以上戦うことは望まず、恭順し続けるのだろうか。
もしそうなら、戦おうとしている新選組は……土方さんの思いはどうなってしまうんだろう。
そう思っていれば、八郎お兄さんがゆっくりと立ち上がった。

「それじゃ、僕はそろそろお暇します。皆さん方に、よろしく伝えてください」
「あ、はい。久しぶりにお会できたのに、何のお構いもできずにごめんなさい」
「そんな事ありませんよ。久しぶりに千尋ちゃんに会えて嬉しかったです。そういえば、千鶴ちゃんは·····」
「今、買い物に行ってるんです」
「そうなんですね。また、二人揃って会えると嬉しいですね」

その後、釜屋を後にした八郎お兄さんの背中を見送っていると入れ違うように、見慣れた人影が姿を現す。

「雪村君、副長は中にいらっしゃいますか?」
「島田さん·····。実は、土方さんは先程お出かけになったんですよ·····」
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