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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第1章 始まり【共通物語】


気付けば夜も更けている。
はやく宿を見付けて、千鶴を休まさなければならないし安全の為にも宿に向かわなければならない。

『いいね、千尋。必ず如何なる時も千鶴を守るんだよ。お前は、千鶴を守る事が宿命なのだから』

父様が何時も私に言い聞かせている言葉を思い出す。
私は千鶴を必ず守らなければならない、千鶴を安全な場所に居させてその命を守らなければならないのだ。

「ね、千尋。父様を捜すのにどれくらいかかるか正直なところ見当もつかないけれど……。お金の持ち合わせにだって限りがあるから、上手に節約して一ヶ月ぐらいは京で過ごしてみよう。その間に父様が見つかるかもしれないし、松本先生だって帰ってくるかもしれないから」
「そうだね……」
「……とにかく、できるだけ出費は抑えないといけないし。安めの宿を探そう」

そう言って千鶴は笑みを浮かべて私へと手を差し出す。
小さくて白い手は、何時も私と歩く時に差し出されて優しく手を握ってくれる。
小さい頃から何時も、千鶴は私の手を握ってくれるのだ。

「そうだね。安いお宿があればいいね」

千鶴と手を繋ぎながら大股で歩き出す。
普段の女性ものの着物を身につけてる時はこんな大股ではあるかないけど、今は袴なので大股で歩く。

女だけの旅は何かと危険。
なので私達は身を守る為に男装をしているのだがーー。
ぱっと見たら男の子に見えるが、恐らく分かる人にはこの男装は直ぐに見破られるだろう。

(でも、道中は危険な目に遭遇はしなかったけど……絶対に大丈夫とは言いきれないよね)

なんて思ったせいなのか、変に油断していたせいなのかもしれない。
ここは決して安全ではない【京の都】だと知っていたはずなのに……。

「おい、そこの小僧達」

浪士に声をかけられてしまった。
弾かれたように千鶴と共に振り返れば、そこには三人の浪士がこちらへと視線を向けている。

「……何か?」

千鶴の声は少しだけ上ずっていた。
それに気が付きながら、私は浪士達をみながらそっと脇に差している刀へと手をかける。

父様は自身を守る為に千鶴には護身術を、私には千鶴を守る為にと剣術を学ばせてくれた。
私はそのお陰か、道場の男達に勝る剣術を身に付ける事は出来た。

「油断した…」

剣術を身につけているから、刀を脇に差してているかと言って安全ではないのだ。
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