第2章 新選組【共通物語】
道場に通っていた時に言われた。
刀は片腕で扱えるものじゃなく、もし片腕に深い傷を負って刀が握れないならば……二度と真剣は振るえないのだと。
「片腕で扱えば、刀の威力は損なわれる。そして、つば迫り合いになれば確実に負ける」
「薬でも何でも使ってもらうしかないですね。山南さんも、納得してくれるんじゃないかなあ」
「総司……滅多なこと言うんじゃねぇ。幹部が羅刹になってどうするんだよ?」
「……え?」
「らせつ……?」
らせつという言葉はあまり聞いたことがない。
それに、らせつというのは何のことなのだろうと首を傾げていれば、千鶴が皆に質問した。
「……【らせつ】ってなんですか?」
「ああ、羅刹ってのは、薬を飲んだら怪我も治っちまうーー」
千鶴の質問に平助君が応えようとした時だった。
隣にいた原田さんが勢いよく立ち上がり、床を勢いよく蹴ると平助君に一気に近づきながら叫んだ。
「平助!!」
そしてそのまま平助君を勢いよく殴り飛ばし、平助君が壁に背中を打ち付けていた。
一瞬、本当に何が起きたのか分からずにただ驚いて立ち上がってしまう。
「いってえなあ、もう……」
「平助君……大丈夫?」
「ほ、頬が腫れてる……」
「……やりすぎだぞ、左之。悪かったな、平助。先に口を滑らせたこっちも悪かった」
「……大丈夫か?悪かったな」
原田さんはとても申し訳なかそうにしながら、短く謝れば平助君は苦笑いを浮かべながら殴られた頬をさすっていた。
「いや、今のはオレが悪かったけど……。ったく、左之さんはすぐ手が出るんだからなあ」
すると、驚いている私たちへと永倉さんは厳しい表情で見てきた。
「千鶴ちゃん、千尋ちゃん。今の話は、君たちが聞いちゃいけない事に、ほんのちょっと首を突っ込んだところだ。これ以上のことは教えられねえんだ。気になるだろうけど、何も聞かないで欲しい。それと、さっきの平助の話は忘れてくれ」
永倉さんは優しい声で語りかけながら、私と千鶴の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
気になるけれども、聞いたらいけない事というのは今の状況で分かった。
でも、それでも羅刹というのもはどいうのもなのか気になっていれば沖田さんが口を開く。
「【羅刹】って言うのは、可哀想な子たちのことだよ」
「……可哀想な子たち」
沖田さんの声は酷く冷たく、目も底冷えするぐらいに暗い。