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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第2章 新選組【共通物語】


その瞳に何も言えずにいると、永倉さんが取り成すような口ぶりで言う。

「おまえさん達は何も気にしなくていいんだって。だから、そんな顔するなよ」
「……はい」

私たちは別に新選組の隊士ではない。
だから、これ以上は深く新選組を知る必要はないのだ。
そう自分自身に言い聞かせながらも、先程の平助君達の言葉が忘れられずにいた。
すると、まるで私の考えている事を見透かすように斎藤さんが声をかけてきた。

「忘れろ。深く踏み込めば、あんた達の生き死ににも関わりかねない」

その夜、もやもやした気分のまま部屋へと戻っていた。
斎藤さんから『忘れろ』と言われたものの、未だに【羅刹】という言葉が脳裏から離れない。
確か【羅刹】というのは仏教の教えにある、鬼神のようなものだったはず。

布団を敷き、体を横にしていればまた永倉さんと平助君の言葉が思い出させる。
【羅刹】に【薬】という言葉、そしてそれに深く踏み込めば私たちの生死に関わるという斎藤さんの言葉。

「……もしかして」

あの夜見た、血に狂っていた人達……とまで考えて私は頭を振った。

「余計な事は、考えないようにしないと……」

これ以上、新選組の秘密には踏み入れない方がいい。
もし踏み入れたら、父様を捜しにいけず、千鶴と父様の三人で江戸にさえ帰れなくなってしまうのだから。

それに、新選組の方々は私達が秘密に踏み込まないようにしてくれている。
彼らの親切さを無下にしてしまうのも申し訳ない。

「……忘れよう」

冷えきっている掛け布団を引っ張りながら、私は体を丸くさせて眠りにつくのだった。
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