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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第2章 新選組【共通物語】


「千鶴、千尋。最初からそうやって笑ってろ。俺らも、おまえらを悪いようにはしないさ」
「原田さん……」
「あ、そういえば千尋ちゃん。斎藤たちから聞いたけど、お前さん心形刀流を使うんだってな!俺も心形刀流を使ってな、一応これでも坪内道場の師範代なんだぜ!」
「そうなんですね……!師範代、永倉さん凄いです!」
「今度、俺も稽古つけてやるよ!」
「ありがとうございます!!」

和気あいあいとした食事、そして原田さんたちの気遣ってくれる心。
嬉しいけれども何だか複雑な気分にもなってくる。
最初は怖い人たちと思っていたのが申し訳なくなってきた時だった。

突然、広間に井上さんが入ってきた。
だがその表情は少しだけ険しいものであり、悲しそうな表情でもある。

「ちょっといいかい、皆」

何時もの穏やかな井上さんの声だけれども、表情は優しいものではなく、目も真剣そのものだ。
その井上さんの様子に一瞬で空気が硬いものへと変わる。

「大阪に居るトシさんから手紙が届いたんだが、山南さんが隊務中に重症を負ったらしい」
「え!?」
「重症……」
「何があったの?」
「ああ……。二人が訪ねる大阪の呉服店に浪士達が無理矢理押し入ったらしい。駆け付けたトシさんと山南さんが、何とか浪士たちを退けたらしいが、その時に斬られたそうなんだ」

重症という言葉に顔が強ばる。
もしや、命にかかわる程なのだろうかと思っていれば千鶴が声をかけた。

「それで、山南さんは……!?」
「相当の深手だと手紙に書いてあるけど、傷は左腕とのことだ。剣を握るのは難しいみたいが、命に別状は無いそうだよ」
「良かった……!」

命に別状が無いという言葉に安堵はしたけれども、武士にとって左腕の怪我というのはあまり良くないのでは……と思っていると皆は厳しい表情のまま押し黙っていた。

「数日中には屯所に辿り着くんじゃないかな。……それじゃ、私は勇さんと話があるから」

井上さんはそう言うと私たちに背を向けて広間から出ていった。
だが、広間は未だに重い空気のままで、しばらくして斎藤さんが口を開いた。

「剣が握られないほどの深手か……。腕の筋まで絶たれているかもしれん。刀は片腕で容易に扱えるものではない。最悪、山南さんは二度と真剣を振るえまい」
「あ……」
「……やっぱり」
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