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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


手が自由になり、土方さんの方を見る。
何時もの土方さんとは違い、怒りと憎悪が滲んだ目を風間に向けていた。
その目は底冷えしたように冷たくもあり、背筋が一瞬だけ凍る感覚を覚える。

刀同士を押し合う二人の力は、ほんの一瞬拮抗し合っていたかのように見えたがーー。
すぐに風間が押し負けてしまう。

「何だと……!?」

風間の反応を見る限り、人間相手に押し負けたことが初めてなのだろう。
何が起こったのか理解出来てないような表情を見せていた。
そんな風間の隙を土方さんは見逃さなかった。

(……風間を、押してる)

鬼のような形相で、土方さんは何度も何度も風間へと太刀を見舞う。
刃か欠けるのではないかというぐらいに、何かに取り憑かれたように刀をぶつけていた。

「くっ……!」

先程まで余裕に満ちていた風間の顔が、今は焦りへと歪んでいた。
そんな風間を見て、土方さんは口元に笑みを宿しながらさっきとは比べ物にならないほどの力で斬撃を見舞う。
その刹那だったーー。

「……まさか、この姿を人前にさらすことになるとは思わなかった。喜べ、人間。本物の鬼の姿を目にした瞬間に、死ねるのだからな」
「……鬼、本来の姿……」

風間の外見が変わった。
髪は白髪へと変わり、目は黄金へと染まりその額には角が四つ生えている。
その姿は鬼本来の姿だった。

(あの姿になった鬼は、何時もの時よりも倍の力が出るって父様たちが言ってた……)

姿を変えた風間は手にした刀を凄まじい速さで振るう。

「ぐっーー!」

先程の動きとは全く違う、鮮やかな刀さばき。
土方さんは太刀筋を目測するのがやっとのようで、顔に焦りが見え始める。
さっきまで土方さんが有利だったが、立場が逆転してしまった。

「どうした、さっきまでの勢いは!?おまえが感じていた悔しさとは、その程度のものだったのか?」

鬼本来の姿になれば、やはり体力は桁違いになるのか、風間は呼吸を乱すことなく打ち込んでいる。

「くそっー!」

一方の土方さんの呼吸は、次第に苦しげなものへと変わっていく。

「くそったれー!」

渾身の力を刀へと込め、土方さんは風間へともう一度切りかかる。
だけど風間は涼し気な表情でその動きを見切り、土方さんの刀をたたき落とし、土方さんの表情は苦しげに歪んでいた。

「ぐぁっ……!」
「土方さんっ!」
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