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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


その温もりにじわりと涙が浮かんだ。
彼の手の温もりは、何処か死んだ父様と似ていて余計に泣けてきてしまう。

「……井上さんの手、凄く温かくて死んだ父様に撫でてもらったり触れてもらった事を思い出します」
「はは……、父様、か。そうだな。私も本来は、あんたくらいの娘がいてもおかしくない年なんだよな……」
「……あっ!すみません、私、凄く失礼な事を!」
「いやいや、そんなことないさ。こんな可愛い娘なら大歓迎だ。さ、戻ろうか。私たちがなかなか戻ってこなくて、隊士たちも心配しているだろう」
「はい」

だけど本当に井上さんは死んだ父様に似ていた。
初めて会った時から雰囲気が似ていると思い、厳しいところも優しい所も本当に似ている。
隣にまるで父様がいるような気がしてしまった。

そして、私は井上さんと共に、隊士さんの所へと戻ることにした。
道中、彼は私へと視線を向けてくる。

「それにしても、あんたが私と一緒に淀藩に援軍を呼びに行くと言った時のトシさんの顔……。あんたを大切に思っているんだろうねえ」
「……え?」
「あんなにも、あんたが援軍を呼びに行くのを反対するだなんて……。しかも、あんたとあんなにも口喧嘩みたいな事をするなんて。そして、トシさんを言い負かせる女子は君が初めてだよ」
「そ、そうですか……?」

淀藩に援軍を呼んでほしい。
土方さんが井上さんに言った時、私も彼のお役に立ちたちと思って援軍に行かせて欲しいとお願いしたのだ。

『何言ってやがる!今、こんな状況でお前を援軍に呼びに行かせれるか!周辺に敵がいるかもしれねえんだぞ!おまえは源さんの足でまといだ!』
『周辺に敵がいることなんて知っていますよ!ですが、援軍を呼びに行ってる間に敵に囲まれたりしたらどうするんですか!敵を引きつけることぐらいできますから!』
『お前が敵を引きつけても、殺されるのがオチだろうが!』
『私は、鬼です!人間とは違い、ちょっとぐらい銃で撃たれたり斬られても平気ですから!』

援軍を呼びに行くのについて行く、ついて行かせない。
私と土方さんはそのことで伏見奉行所にで言い争いをしていた。

『さっきも言いましたが、援軍を呼びに行く時に敵に囲まれたらどうします?私はその時に敵を引きつける事も出来ますし、新選組に援護を頼みに走ることもできるんですよ!今は、私の命より新選組の事を考えてください!』
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