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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


「これは、土方さんのです。土方さんが食べてください」
「いいから食え」
「いえ、私は大丈夫ですので土方さんが食べてください。土方さん、朝からお忙しくて何も食べていませんでしょう?だから食べてください」

土方さんの方が食べなければいけない。
朝からずっとお忙しくされているのだから、ちゃんと食事をしなければ倒れてしまう。

彼に食べてもらわなければと、私は断り続けた。
断り続ける私に土方さんは少し、むっとした顔をしながら差し出したおにぎりを見つめる。

「たく、変に強情だな。……もしかして、遠慮してんのか?半分ずつだ。これならいいだろ」

土方さんはおもむろにおにぎりを半分に割ってから、その片方を私へと差し出した。
まるで有無をも言わせない様子に、私は次こそ断ることが出来なかった。
おずおずと、私は半分になったおにぎりに手を伸ばす。

「……ありがとうございます、土方さん。それでは、お言葉に甘えて、半分いただきます」

私が半分のおにぎりを受け取ると、土方さんは残った方のおにぎりを乱暴に口に運んだ。
そんな彼を見ながらも、私もおにぎりを口に運ぶ。

「……美味しい」

自分で作った物だけど、昨日ぶりに食べたご飯に思わずそう呟いてしまった。
そんな私を見ながら土方さんはおにぎりを食べながら言う。

「おまえは本当に、他人にばっかで自分の事は後回しにするな。他人にばっか気を遣ってねえで、飯ぐらい自分の分はちゃんと食え。わかったか?」
「……すみません。次からはそうしますね」
「別に……怒ってるわねじゃねえ」

ぶっきらぼうに言う土方さんは、おにぎりを食べるのを止めてから小さな声で囁くように呟いた。

「……ありがとうよ」
「え……いえ、そんな。私なんかよりも、何時も頑張っている皆さんに食べてもらったほうがいいですから。私は後回しでいいんです」
「そうじゃねえ……今日、おまえがここに残ると決めてくれたことにだ」
「……え」

まさか、お礼を言われるなんて。
私は彼の言葉に驚きながら、おにぎりを食べるのを止めてしまう。

「なに、惚けてやがる……さっさと食え」
「は、はい!げほっ!!」
「馬鹿、噎せるほど焦るんじゃねえよ!」

慌てて食べたらご飯が変な所に入ってしまい、思わず噎せてしまう。
そのせいで苦しかったけど、胸は温かいものでいっぱいになっていた。
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