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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


すると、おにぎりが最後の一つだけになったのに気付いた隊士の方が手を伸ばしていたけれども止めてしまった。
だけど、私はそんな彼に微笑みながらおにぎりを差し出した。

「どうぞ、遠慮せずに食べてください」
「ありがとうございます!」
「いいえ」

隊士の方は、手に取ったおにぎりを嬉しそうに頬張るので私も吊られて笑ってしまった。
こんなに嬉しそうに食べえ貰えたら、作った甲斐があるし純粋に嬉しい。

そして、私は少量のあまったお米で作ったおにぎりを持って千鶴を探していた。
さっきまでお茶を配っていたから、近くにいるはずと思っていれば、後ろ姿を見つける。

「千鶴!」
「あ、千尋。お疲れ様、おにぎり配り終わったの?」
「終わったよ。はい、千鶴」
「むぐっ!」

私は持っていたおにぎりを千鶴の口に押し付けるように食べさせた。

「朝から何も食べてないでしょ?食べないと倒れちゃうよ」
「……うん、ありがとう。千尋は食べたの?」
「食べたよ。じゃ、私は外で洗濯してくるね」

食べたというのは嘘である。
朝から何も食べていないし、本当は残ったご飯を食べようかと思ったけれども残りは千鶴に食べさせたので無かった。

お腹は空いているけれども、隊士の方々が美味しそうに食べてくれる姿を見たら空腹も消えてしまいそう。
それに明日の朝食べれば良いと思った時、【くうう】と間抜けな音でお腹が鳴った。

(ひ、人前じゃなくて良かった……。聞かれてたら凄く恥ずかしい……)

お水で空腹を紛らわせよう。
そう思った時に、不意に背後から声をかけられた。

「今のは、おまえの腹の音か?」
「……土方さん!?」

いつの間にか土方さんが後ろにいて、私は目を見開かせながら恥ずかしさで泣きそうになった。
完全にさっきの音を聞かれてしまっている。

「あ、あの……これは、その……」
「隊士どもが夕飯を全部食っちまったらしいが、おまえは食ったのか?」
「……えっと、私はあとで食べますので」
「……食ったのかって聞いてるんだ」
「まだ、食べてないです……」

土方さんの言葉に、私はおずおずと答えた。
すると彼はやれやれといった顔で、懐から何かを取り出した。

「ったく、しょうがねえな……ほらよ」

そう言いながら土方さんが差し出してきたのは、私が竹の葉で包んで幹部の方々に渡したおにぎりだ。
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