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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


「耳が痛いかもしれないけど、事実でしょう。もし風間がここに来たら、あなたたち、彼女たちを守れるんですか?もしかしたら、薩摩や長州の兵たちと戦っている間に来てしまうかもしれないんですよ」

お千ちゃんの言葉に土方さんは黙ってしまう。
その可能性があるかもしれない……だから、お千ちゃんの言葉に言い返せないのかもしれない。

「……それに、彼女たちはあなたたちとは違う。鬼なんですから、同族の私たちと共に来るべきです。私たちなら、彼女たちを安全な場所で守り抜くことができますから」

彼女は再び私と千鶴に向き直り、念を押すように言い聞かせてくる。

「ね、一緒に行きましょう。あなた達が私たちと共に来てくれれば、この人たちも戦いに専念できるわ。それに戦になれば千尋ちゃん……貴方は嫌な記憶を思い出すはずよ」
「……嫌な記憶」

里を滅ぼされた時の記憶の事を言っているんだ。
確かに戦になれば、火は放たれるかもしれないし、銃声や刀同士がぶつかり合う音に人が殺される悲鳴。
あの時に聞いた何もかもをまた、聞くことになるかもしれない。

血は見たくない、誰かが殺される所も見たくない。
正直な言えば私は戦になんて関わりたくない……それに、私たちの存在が彼らの戦いに邪魔になるかもしれない。
気持ちが揺れ動き、私は思わず床へと視線を落とした。

(ここを離れた方がいいかもしれない……。でも、ここを離れたくないのも本音)

それに、千鶴を守らなければならないという使命もある。
あの時、父様や母様と交わした『千鶴を守る』その約束を守らなきゃいけない。

(どうするべきなの……)

思わず、私は土方さんへと視線を向けた。
彼はなにか思うことがあるのか、無言のまま目を逸らしてしまう。

(出ていくべきなのは分かってる……)

そう思った時だ。
私はふと、近藤さんと交わした約束を思い出す。
彼と土方さんの傍にいて、土方さんを支えるという交わした約束を……。

「千鶴ちゃん、千尋ちゃん。どうして黙ってるの?さっきも言った通り、あなた達はここを出た方が……」

約束がある……。
千鶴を守る約束、土方さんを支える約束、どちらかを選ばないといけない。
どうするべきなんだろうと思っていれば、私の躊躇いを見抜いたように土方さんが言葉を投げかけてきた。
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