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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


今の沖田さんの顔色はあまり良くない。
見れば確かに食欲は無さそうだなと思っていれば、沖田さんは冷たく言い放つ。

「用事はそれだけ?だったら、もう戻ったら」
「え、あ……いえ、あの……」
「なに?まだ何かあるの?」
「……お二人は、ご存知ですか?……山南さんが羅刹隊を強化したいとおっしゃってること」

私の質問に、平助君は苦い表情を浮かべた。
山南さんと同じく、彼は羅刹隊の一員であるので話は知っているのかもしれない。

「……ああ、そりゃあな」
「まあ、山南さんの立場だったら、そう考えるのも無理ないんじゃない?羅刹隊だってある程度の人数がいないと、戦で手柄を立てようがないし。結局、肝心な時に役に立たないってことになれば、切り捨てられるのは目に見てるしね」
「……切り捨てるって」

あまりにも冷たい言葉に、私は思わず眉間に皺を寄せてしまった。
羅刹隊と言っても、元は人であり新選組の隊士だった人たち。
そんな彼らを簡単に切り捨てるだなんて……そう思っていれば、沖田さんは小さく笑った。

「あれ、何を驚いてるの?もしかして、役に立たない人達に無駄飯を食べさせてあげるほど、慈悲深いとでも思ってる?まあ、君を四年も養ってあげてはいたけど、それはたまたまってことを忘れちゃ困るなあ」
「……すみませんでした」
「総司、いくら何でも言いすぎだろ。こいつを今まで屯所に閉じ込めてたのは、オレたちの事情なんだし」

様子を見かねた平助君が、眉を少しだけ吊り上げながら口を挟んでくれる。
だけど、沖田さんはそんな彼に素知らぬ顔をするとあらぬ方向へと視線を投げてしまった。

最近の沖田さんの言葉はキツイものが多い。
苛立ったような言葉遣いだったり、他の人への皮肉が込められていたりと。

「にしても、土方さんは何をしてるんだろうね。近藤さんをあんな目に遭わせた奴らを、さっさと斬りにいけばいいのに。僕がこんな身体じゃなきゃ、すぐにでも仇を取りにいくんだけど」
「……沖田さん」

沖田さんは刀を取って戦えないことが、どうしてももどかしくて仕方ないみたい。
近藤さんが襲撃されたと知らされてからは、兎に角苛立った様子を見せることが多くなった。

「……平助君。君は、どう思う?」
「オレ?オレは……、そうだなあ……」

平助君に質問を投げかけると、彼は少し考え込む。
だけどやがて話を始めた。
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