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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


真っ先に反対の意見を述べたのは原田さん。
彼は少し厳しい表情をしながら、羅刹隊の増強を認めるつもりはなかった。

「敵味方入り乱れて戦う中で、連中の手網をうまく取れるとは思えねえ。戦力にはなるが、危険すぎるぜ」
「……だな。何より、人道的に見ても問題があるだろ」
「……では、他にどんな策がある?他の者の意見に異を唱えるのであれば、代案を出すべきだと思うが」
「だから、俺らだって考えてんだろ。そんなすぐ、いい案が出たら苦労しねえよ」
「……副長は、どう思われます?」

それまで、静かに話を聞いていた土方さんは何かを考え込みながらも顔を上げた。

「……とりあえず、もう少し考えさせてくれ。敵の出方を見なきゃ何とも言えねえし、幕府側の意向もあるからな」

近藤さんが負傷し、何よりも時が刻一刻と戦に近付いているせいなのか皆さんはかなり殺気立っている。
殺気立った空気に、少しだけの息苦しさを感じながらも私たちは彼らの様子を見るしか出来なかった。

(これから、新選組や羅刹隊もどうなってしまうんだろう……)

その晩のこと。
私は沖田さんの病状を確かめるために、彼がふせっている部屋へと訪れていた。

「こんばんは、沖田さん。お身体の具合はいかがですか?……って、平助君?」

沖田さんの部屋に入れば、そこには暇をもてあましているのか平助君の姿もあった。

「お、千尋。どうしたんだ、こんな夜遅くに」
「どうって……」
「……若い女の子が夜中に男の部屋に来るのは、どうかと思うぜ」
「平助君……そういうのじゃないから。平助君も知っているでしょ。私と沖田さんは別にそんな関係じゃないから」
「まあ、確かにそうか。おまえの場合、そういう色っぽい話にはとことん縁がなさそうだもんな」
「……それ、どういう意味?」

色っぽい話に縁がなさそう。
その言葉に、少しだけむっとしながら平助君に質問をすれば彼は目を細めながら小さく笑った。

「どういう意味もこういう意味も……、なあ?」
「……何か、用事があったんじゃないの?じゃなきゃ、こんな夜中にわざわざここに来たりしないよね」
「あ、はい。沖田さんのお身体の具合を診に来ました。お加減はどうですか?食欲があるようでしたら、何か食べたいものとかあります?」
「……あるわけないでしょ、この状況で」
「そ、そう……ですよね」
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