第10章 乱世【土方歳三編】
「ったく。あんたは、あんたの事だけを考えればいいのに。人の事ばかり心配しやがって」
そうして、近藤さんと沖田さん。
二人は大阪城へと向かう事が決まり、警護という名目で数名の隊士の方も同行する事が決まった。
新選組局長が撃たれたという事態は、夜になっても隊士の方々をざわつかせていた。
近藤さんが狙撃されて数刻。
少しした拭き掃除などをしたりしている時、広間のふすまが開いて千鶴が入ってきた。
「千尋」
「千鶴……。相馬君とは、話はちゃんと出来た?」
「うん。相馬君と、誓いを交わしたの」
「……誓い?」
「この戦いで、私を守り抜いてくれるって」
少し、顔を赤らめさせながら呟く千鶴に私は目を見開かせてしまった。
私が居なくなった後、まさかそんな会話をしていたなんて。
「そっか。本当に、相馬君は千鶴が大切なんだね」
「え!?あ、そ、そうかな……」
千鶴が顔を真っ赤にさせているのが、可愛らしいと思っていた時だった。
ふすまがまた開き、誰が入ってきたのだろうと思えばそこには山南さんの姿がある。
「……おや、雪村君たち。まだ起きていたんですか?」
「山南さん……。何か、ご用ですか?あ、ここをお使いするなら空けますよ」
「いいえ、構いませんよ。君たちにも同席してもらった方がいいでしょう」
「えっ……?」
同席した方がいいとは、一体どういうことなのだろうと不思議に思ってしまう。
だけど山南さんの言葉には言いきれぬ不安を抱いた時、主立った幹部の方々が続々と広間に入ってきた。
ここで、一体何の話し合いをするのだろうか。
胸騒ぎが激しくなるのを感じながらも、私と千鶴は少しだけ端の方に座った。
「……皆、揃ってるみてえだな」
「沖田君の姿が見当たらないようですが……」
「あいつにゃ、聞かせる必要はねえ。もし総司に渡しちまったら、身の危険も顧みずに近藤さんの仇を取りにいくに決まってるからな」
「……それが彼の望みならば、そうさせてあげるべきなのでは?土方君は相変わらず、優し過ぎますよ」
今の二人の会話で胸騒ぎはどんどん大きくなっていくのを感じる。
すると、原田さんたちは少しだけ怪訝そうな表情をしてから二人に声をかけた。
「俺たちに、一体何の用なんだ?いつ戦が始まるかもわからねえ今、わざわざ呼び出したってことは、まさかーー」