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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


「私は、君に千鶴を守って……そうお願いした。
千鶴に何かあれば許さないからと」
「……はい」
「もし、君が千鶴を遠ざけて千鶴に何かあれば、私は君を許さない。それだけは覚えておいて……じゃあ、私はまた近藤さんの様子を見に行くから。あとは二人でゆっくりと話してみてごらん?」

それだけを伝えると、私はその場から離れて広間を後にする。
二人だけになった時、あの子たちは何を話し合うのだろうと思いながらも近藤さんがいる部屋へと向かった。

近藤さんの部屋に向かえば、行灯の明かりが揺れていた。
部屋には近藤さんじゃない人影があり、誰か来てるんだと思いながふすまの前で立ち止まる。

「近藤さん、雪村です」
「雪村か……入れ」
「……土方さん?……失礼します」

中に入れば、そこには土方さんがいた。
近藤さんは眠りについているようだけども、傷が痛むのか時折顔を歪ませている。

「……やっぱり、熱があがってますね」

近藤さんの額に触れて、熱の確認をする。
じわりと熱さが伝わってきて、思わず顔をしかめながら傍にあった桶で布を冷やし絞ってから近藤さんの額に置いた。

「相馬は、雪村姉が相当大事なんだな」
「土方さんも、やっぱりそう思いますか?」
「見りゃ分かる」

土方さんは小さく笑いながらも、視線は近藤さんから離すことはなかった。

「私、てっきり土方さんにも大阪城に行けって言われると思いました」
「言っただろ?俺も最初は大阪城に行かすつもりだったが……お前ら姉妹はこうと決めたら梃子でも動かねえだろ。それに、おまえに恨まれたら後が怖い」
「怖いって……鬼の副長にそんな事を思われるなんて、思いませんでした」
「うるせえ」

私の言葉に土方さんはまた小さく笑った。
でもその目には、近藤さんを心配していて悲痛も混じっているように見える。
いつもの様に振舞っているけど、本当は近藤さんを凄く心配しているんだ。
そう思っている時だった。

「む……トシと、雪村君か」
「近藤さん、目が覚めたか?」
「近藤さん……。今、体調はどうですか?」

近藤さんは薄らと目を開けながら、私と土方さんの顔を確認してから小さく笑った。

「うむ……肩がやはりかなり痛むな。身体も熱い。そうだ、トシ。相馬君には伝えてくれたか?」
「ああ、伝えたぜ。戦に参加するってよ」
「そうか、彼ならそう言うと思っていたよ」
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