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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


「私と千尋はここに残るつもりです。新選組の隊士ではありませんが、新選組の一員としてここまで来たつもりですから」
「私と千鶴は大阪城には行きません」
「ですが、雪村先輩たち!」

私たちの言葉を聞いても尚、相馬君は何かを言おとする。
だけどそこで助け舟を出してくれたのは、意外なことにも土方さんだった。

「……おい相馬。こいつらを戦場から遠ざけたいってのはどうしてだ?」
「それは、ここが危険だからで……」
「物事は正確に言え。……おまえはこいつらが近藤さんの二の舞いになるのを恐れてるんだろ」

土方さんの言葉には相馬君は図星だったようだ。
彼は目を見開かせながら、狼狽えてしまっている。
そんな彼から視線を外した土方さん、私たちの方へと向き直った。

「やれやれ。俺としても、本当はおまえ達を大阪城に同行させるつもりだったが……こうと決まりゃ梃子でも動きそうにねえな。……他の連中には俺から伝えといてやるよ」
「ありがとうございます、土方さん」
「おう。……相馬。おまえに任せたのは近藤さんの小姓と、雪村たちの護衛だ。……逃げるんじゃねえ。今度はきっちり役目を果たしてみせろ」

それだけを言うと、土方さんは軽く手を振ってからこの場から背を向けて出ていく。
そんな彼の背中を見送ってから、私は心で感謝の気持ちを伝えた。

でも土方さんが助け舟を出してくれるとは思わなかった。
てっきり【相馬の言う通り、大阪城に行け】と言われると思っていたから。
そして私は、相馬君へと視線を向けた。

「……多分だけど、相馬君が一番心配してるのは千鶴だよね」
「……え?」
「雪村先輩、あの……俺は、先輩のことも」
「私を心配してくれてるのも分かってるよ。でも、君が一番心配してるのは千鶴のこと。それはよく分かるよ……私も本当は千鶴にこの場じゃなくて安全な場所にいてほしいもの。千鶴の事が大切だから」

相馬君は最初、否定しようとしたけれどもそれをやめて私の話を静かに聞いてくれる。

「大切だからこそ、危険から遠ざけたいよね。その気持ちはよく分かるよ。分かるけど、大切な人の気持ちも分かってあげなきゃいけない。千鶴を遠ざけないで。守ると決めたなら、傍で守ってあげて。それに前、私は君に言ったよね?」

私が何を言おうとしてるのか分かったのか、相馬君ははっとした表情になった。
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