第10章 乱世【土方歳三編】
「……承知しました。俺は新選組の隊士として、皆と共にここで戦い抜きます」
「……よかったね、相馬君」
「はい!」
さっきまでしょげていたのが嘘だったみたいに、相馬君の目はやる気に満ちていた。
千鶴の言葉に相馬君は大きく頷いていたけれども、突然彼は千鶴をじっと見る。
そして、その目は次に私へと向けられた。
どうしたんだろう。
そう思いながら相馬君を見ていれば、彼ら何かを考える素振りを見せてから土方さんへと話を向けた。
「土方副長。近藤局長は、戦えない者は自分と共に大阪城へ下がれと言っていたんですよね?だったら……雪村先輩たちを、一緒に連れて行ってもらえませんか?」
「え!?」
「え!?どうして……!?」
「ここはもうじき戦場になります。先輩たちはこれまでで雑用にしろ、何しろ、充分に役目を果たしたはずです。……だから……」
相馬君は私たちを心配してのことなのだろう。
その心配は嬉しいけれども、私はこの場から離れるつもりは到底ない。
「相馬君の心配はとても有難いよ」
「……雪村先輩」
「でも、私はここを離れるつもりはないの。戦えないのは分かっている。でもね、刀を持つだけが戦いじゃないんだよ。それにきっと、今私はここを離れたらきっと後悔してしまう。それだけはしたくないの」
私の言葉に相馬君はかなり驚いた表情をしていた。
目を見開かせてから、そして悲痛にも近い表情をしていれば、千鶴も私の後に言葉を続けた。
「相馬君。近藤さんは言っていたんでしょう?戦うことのできない者だけ同行すればいいと」
「はい、ですから先輩たちも……」
「いいえ。だって私はまだ戦えるもの。千尋の言う通り、刀を持つだけが戦いじゃないの。それに、これから戦が始まったら、治療や雑用の仕事だって、いくら人手があっても足りなくなる。刀を振るったり銃を撃ったりするような事はできないけど……それでも、まだやれることは残ってる。皆とは違う形でも、それが私や千尋の戦いだから」
「そういうことだよ、相馬君。私たちには私たちの戦いがあるの。だから、大阪城には行かない」
「……雪村先輩たちの、戦い……」
まるで胸を突かれたよつな表情を浮かべる相馬君。
そんな彼に、千鶴と私はもう一度言い放った。