第10章 乱世【土方歳三編】
「……先程、情報が入りました。襲撃の犯人は御陵衛士の生き残りの可能性が高いそうです」
「御陵衛士……!?」
「御陵衛士……?まさか、三木さんが!?」
「直接現場にはいなかったようですが、絡んでる可能性は充分に有り得ます。……奴の新選組への恨みは並々ならぬものがありますから」
三木さんは実兄の伊東さんは新選組に殺されている。
恨みを持っていてもおかしくはないし、前に実際に屯所を襲撃しに来ていた。
今回も三木さんが絡んではいないとは言えない。
「どらちにせよ近藤局長が襲われ、命の危機にあってしまったのは事実。幹部の皆さんは憤っておられました。……特に沖田さんは」
「沖田さんは、もうこのことを?」
「はい。先程俺が伝えました」
誰よりも近藤さんを尊敬している沖田さん。
そんな彼が、近藤さんが狙撃されたなんて聞いたら烈火のごとく怒り狂うに決まっている。
「どうして……どうして、相馬君が伝えたの?」
「……俺が伝えなければいけなかったんです。沖田さんに守るように言われたのに、守り抜くことができなかった俺が……」
彼の落ち込みはかなり激しかった。
そんな彼を見ながら、私は近藤さんの容態を土方さんに伝えなければならなく、その場に千鶴と相馬君だけを残してしまった。
(二人とも、落ち込みがすごい……。なんて言葉をかけたら、いいんだろう)
そう思いながら、私は土方さんが今いる部屋へと向かった。
彼も近藤さんが狙撃されたと知った時、とても見たことないぐらいに動揺していた。
「土方さん」
「……雪村か。近藤さんの容態はどうだ」
「今は、怪我のせいで徐々に熱が上がってきています」
「そうか……」
土方さんは眉間に皺を寄せながら小さく、そして短い言葉を呟いた。
「相馬と、姉はどうしてる?」
「今は、広間にいます。二人とも……すごい落ち込みようで」
「だろうな。二人とも、近藤さんに一番近い距離にいたのに、あんな事が起きちまったからな。相馬が広間にいるなら、話があるから行かねえとな」
「話、ですか?」
「ああ。近藤さんから言伝を頼まれてるから、アイツに伝えなきゃならねえんだ」
そう言うと、土方さんはゆっくりと立ち上がり部屋を出て廊下を歩き始めた。
私はそんな彼の後を追いながら、先程までいた広間へと戻っていく。
広間にはやはり、相馬君と千鶴はまだ残っていた。