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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第10章 乱世【土方歳三編】


「薩長軍の連中なんざ、ぱぱっと蹴散らして、さっさと俺たちの屯所に戻ろうぜ!」
「あ……はい!」
「……はい!」

きっと戦は直ぐに終わってくれるはず。
そして、きっとまた平和が訪れて皆で不動堂村の屯所に戻れるはずだ。
頼もしいお二人の言葉に、私はそう思いながらも、内心の少しの不安を押し込めた。

今はただ、差し入れを運びながら私が出来ることをしなきゃいけない。
そう思いながら千鶴と共に動き回っていった。

「皆さん、冷えてきましたし、温かいお茶でもどうぞ」
「ああ、ありがとう雪村君たち。そこに置いておいてくれるかい」
「おにぎりもありますので、時間がある時にでも召し上がってください」
「助かる。今日は朝から何も口にしていなかったからな」

お茶と直ぐに食べることができるおにぎりを広間へと運んでいれば、斎藤さんと井上さんたちはなにやら地図を覗き込んでいる所だった。

「南に宇治川がある以上、恐らく敵軍が布陣するのは北か西か」
「はい。それなりの数が集まるとなると、ある程度の場所が絞れてくるかと。……しかし、薩長軍はずいぶんと気勢を上げているようですね」
「幕府から実権を取り上げて、勢いづいているのだろう。士気が高いとなると厄介だな」
「とはいえ、全体の兵数ではこちらが大きく上回っているからね。防衛戦なら案ずることはないさ。私たちは私たちの役目を果たせばいい」

井上さんの言葉に、斎藤さんと山崎さんは同意の意味で頷きを返す。
そんな彼らの様子を見ながら、そのあとも私と千鶴は差し入れを届けたり、他の隊士の方たちとも話したりしみていた。

(やっぱり皆さん、苦戦することはあっても負けるはずはないと思っているみたい……)

そんな中の事ーー。

「ーーああ、相馬。おまえの懸念はもっともだ」

庭の方から、真剣な土方さんの声が聞こえてきて、私はそちらへと視線を向けた。

「あれは……土方さんと相馬君?」
「そう、だね……。二人で何のお話をされてるんだろう」

庭の方を見れば、そこには土方さんと相馬君が何かを話し込んでいた。

「……皆は勝って当然と考えていますが、俺は敵を侮るべきではかいと思います。俺が陸軍隊として参加した長州征伐も、幕府はせいぜいが賊軍を懲らしめる程度の戦だと考えていました。しかし、いざ蓋を開けてみれば、結果は幕府側の圧倒的な敗北……」
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