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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「別に、おまえに腹を立ててたわけじゃねえよ。俺は、おまえのことでいつも頭が一杯なわけじゃねえからな」
「あ、はい、それは分かっていますけど……。すみません、自意識過剰でした……」

さっきの言葉は自意識過剰だった。
私はその事についても頭を下げてから謝罪をすれば、土方さんはまた呆れたようにため息を吐く。

「だから、いちいち謝るんじゃねえって言ってんだろうが」
「え、あ!すみませんでした……あっ!じゃ、なくて……はい……」
「ったく……。おまえ、気が強いと思えばおどおどしてみたり……訳のわからねえ奴だな」

土方さんは私の行動や言動に、可笑しそうに表情を緩めながら笑みを漏らした。
その事に恥ずかしく思ってしまったけれども、土方さんが微笑んでくれた事に何故かほっとしてしまう。

「あの、では何故機嫌が悪そうなんですか……?」
「そうだな……。おまえがよく知ってる通り、新選組の内情もゴチャゴチャしてるんだが、それ以上に、お上のの方が良くねえ」
「お上の方が……?」
「……おまえももう余所者じゃねえし、話してやってもいいか。今、薩摩の連中や、奴らと懇意にしてる公家共が動いてやがるらしくてな。もしかすると近々、何か騒動が起こるかもしれねえんだ」
「騒ぎ……」

その言葉に嫌な感じがした。
もしかしたら、また禁門の変のように京の町に火が付けられてしまうのだろうか。
そんな不安が過ぎってしまう。

「……どうなるんですか?もしかしたら、また禁門の変のようになるのでしょうか……」

私の言葉に、土方さんは難しい顔をされたまま首を静かに横に振った。

「……こればっかりは、事が起きてみねえとわからねえ。俺たちがどうこうできることじゃねえからな」

彼の言葉は表情で胸の内の苦悩が伝わってくる。
土方さんの選択に、新選組隊士全員の運命がかかっている……その重圧はかなりのもの。
私には想像すら出来ない物の筈……そう思ってしまえば、彼の重荷を少しだけも取り除きたくなった。

「あの、土方さん。……他に何か、お手伝いできることはありませんか?」
「だから今日、頼んだじゃねえか」
「今日のもの以外で、何か出来ることがあれば何でも言ってください。新選組や、土方さんが大変な時ならば、私も手伝いをさせてください……お願いします」
「おまえな……」

土方さんは私を見ながら、鼻白んだ様子で呟いた。
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