第2章 新選組【共通物語】
「っ……!」
「もしや、あんた……心形刀流を習っていたのか?」
「あ……はい。そうです」
斎藤さんは少し驚いた表情をしながらも身を引き、刀を直ぐに収めた。
そして弾いた私の刀を手にすると、私の目の前に持ってきてくれたので受け取る。
「へぇ、千尋ちゃん心形刀流を習ってたんだね。しかも……君の腕前、多分うちの隊士達に劣らないと思うよ」
「本当ですか!?」
「うん。ね、一君」
「ああ……。もっと鍛錬をして剣術を磨けば更に上達する。女子にしては強い」
「本当ですか……?」
あんなに直ぐに負けてしまったのに。
でも、褒められた事がなにより嬉しくてたまらなかった。
剣術をもっと磨けば千鶴をちゃんと守ることが出来るのだろう。
「あんた達は外を連れて歩くのに不便を感じない腕だ」
「「え?」」
「へえ、二人共、一君のお墨付きかあ。これってかなりすごいことだよ?」
「じゃあ、私たち……外に連れて行ってもらえるんですか?」
「……外出禁止令を出した人が許可するなら、いつでも連れていってあげるんだけどね?」
沖田さんの言葉に、そういえば土方さんが居ないんだったという事を思い出した。
「副長が大阪出張から戻るまで、今しばし待たせることになる。……済まないな。だが、巡察に同行できるよう、俺たちからも副長に進言しておこう」
「だから、もう少しだけ大人しくしててね。遊び相手くらいなら、なってあげるからさ」
「遊び相手って……」
「嫌な予感しかない……」
沖田さんのニンマリとした笑顔からは、嫌な予感しかない。
しかも冗談なのか本気なのかよく分からないし、本当にこの人だけは苦手だ。
「それでは、俺たちは行く。他の隊士たちに見つからないように部屋に戻れ」
そう言って斎藤さんたちは歩いていこうとしたが、私はある事を思いついて呼び止めた。
「あの、斎藤さん!もし、斎藤さんにお時間があれば……私に稽古を付けてくださいませんか?」
「……稽古を?何故?」
「私、今以上に強くなりたいんです。自分自身が守れるだけじゃなくて、千鶴の事を守れるぐらい……もっともっと強くなりたいんです。お時間がある時だけで構いません!お願いします!!」
私は勢いよく斎藤さんへと頭を下げた。
断られるかもしれない、そう思いながらも頭を下げ続けていれば斎藤さんが少しだけ笑った声が聞こえた。