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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「えっと……。あ、ここかな?天満屋」

建物の軒先に掲げられている行灯の屋号を確かめれば、そこには【天満屋】の文字がある。
ここで間違いないと確認してから、そのお店へと近づいた。

斎藤さんは現在、【山口】という偽名で天満屋に逗留していると聞いた。
本名ではなく、偽名で斎藤さんがいるかをお店の方に確認しなければと思いながら、店前に立つ番頭らしき人に声をかける。

「あの、すみません。ここに逗留されている【山口】という方に、用事がありまして……」

番頭さんにそう伝えると、直ぐに彼は斎藤さんに呼びに向かってくれた。
そして程なくしてから斎藤さんがお店の中から姿を見せる。

「さい……じゃない。山口さん、お呼び立てしてすみません」
「雪村……、あんたが来たのか」

私が来るとは思っていなかったようで、斎藤さんはかなり驚いた顔をされていた。
確かに、私が来るだなんて思わないよねと思いなが苦笑いを浮かべる。

「すみません、私みたいな頼りない者が来てしまい……」
「いや、そんなことはない。少し、意外に思っただけだ。そろそろ連絡がある頃合だとは思っていたが……副長が、あんたを使いに寄越すとはな」
「少し、無理を言ってお手伝いをさせてもらったんです……」
「……だが、妙案だ」
「妙案?」
「俺の顔を知っている他の隊士に遣いに寄越せば、この場所を知られてしまう。かといって、昨日今日入ったような新参の隊士を寄越すわけにもいかん。どこかの間者かもしれんからな。疑われることなく遣いに出せて、どこの息もかかってない人間ーー。……さすが副長だ。これ以上の人選は有り得ん」
「……あ、だから、私を……」

斎藤さんの言葉で、何故私がこのお役目を貰ったのか確信した。
ここまで考えて私を遣いに出したなんて、やはり土方さんはすごい人だと改めて感心する。

「では、書状を」
「はい。どうぞ」

土方さんから預かっていた書状を、斎藤さんへと手渡した。
そして斎藤さんは書状を受け取ると、素早く目を通していく。
暫くして、斎藤さんは書状を読み終えると店の提灯の火で燃やしてしまった。

「斎藤さん、燃やしてもいいんですか……?」
「山口だ」
「あっ……!すみませんでした、山口さんでしたね。それで、その書状は燃やしても大丈夫だったんですか?」

大事な物じゃないのかな。
そう思いながら燃えた書状を見る。
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