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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


その言葉は心強くもある。
だけど、それは新選組の役目ではないはず……。

「ですが、皆さんの……新選組のお役目は私たちのような小娘を守ることではない筈ですが……」
「じゃあ、何だ?あいつらの方が俺たちより強いから、おまえらを奴らに差し出して命乞いするべきだってのか?そんなのは、武士のやり方じゃねえ。少なくとも俺たちは、一度決めたことをてめえの都合でころころ覆すようなーーそんな腰抜け連中を目指してるつもりはねえんだ」
「武士のやり方……」

土方さんの言葉は揺るぎないものがあり、私は何も言えなくなった。
私たちを新選組から放り出してしまった方が楽になることは、土方さんだってきっとわかってるんだと思う。

でもそうしたら、彼らが目指しているものから、かけ離れてしまうーー。
だから、私たちをここに置いて下さっているんだ。

「……すみませんでした、失礼なことを言ってしまって」
「詫びる必要はねえって言ってんだろうが。何度も同じことを言わせるな」

ふと、土方さんのお顔を見れば照れたようにしていた。
珍しい表情に驚いてしまっていれば、土方さんは顎を反らせて言った後、再び私を見下ろす。

「……もしまた今日みてえなことがあったら、遠慮せずに俺に言え。山崎や島田を通して伝えてくれてもいい。だから、自分でなんとかしようと思うな。刀を構えたりもだぞ」
「……はい、わかりました」

頼ってもいいんだ。
そう思いながら、土方さんが開けたままのふすまからは空が見えている。
少しだけ太陽が傾いている事に気がついた私は、千鶴の方へと慌てて振り返った。

千鶴は確か、夕方前から相馬君と共に沖田さんの看病をしに行くはず。
そろそろ行った方がいいと思った私は、千鶴へと声をかけた。

「千鶴、そろそろ沖田さんの所にいく時間じゃ……」
「……あ、そうだった!じゃあ千尋、私行くね」
「うん」

慌てて向かった千鶴を見送り、土方さんも彼女を見送ってから、同じように部屋を出ていこうとする。
だけど私は思わず彼を呼び止めた。

「あの、土方さん……!」
「何だ?まだ何かあるのか」
「その……」

先日の屯所襲撃で、風間に怪我をさせられて負傷した隊士の方々が多数。
斎藤さんは屯所を離れていて、近藤さんも連日幕臣の方との会合に出られている。
土方さんはかなりお忙しいはず。
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