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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「山南さん、刀を納めてくださいませんか……」
「怖がる必要はありませんよ。貴方たちを殺すつもりはありません。ただ、ほんの少し……その血を分けてもらえるだけで良いのです」
「……山南さん!刀を納めてください!」

私は、刀を収めてほしいとお願いするが彼は私の言葉がまるで聞こえていないよう。
ゆっくりと彼は近づき、私は唇を噛み締めると柄をゆっくりと握りしめた。

それと同時に彼は、不吉な輝きを帯びた刀を大きく振り上げた。
危ないと思い、刀を慌てて鞘から抜こうとした時だ。

「おい山南さん、何してやがる!」

土方さんの声が聞こえたと思えば、彼は直ぐに部屋へと駆け込んできた。

「土方さん……!」

そして、土方さんは部屋の中を見てから眉間に皺を寄せた。
刀を私たちに向けている山南さんと、刀を手にしている私……不穏な光景である。

「こりゃ一体、どういうことだ?あんたともあろう人が、屯所の中で刀を抜くなんざ……気でも触れたか?」
「ああ、土方君、ちょうど良かった。君も、手伝ってくれませんか?我々に協力してもらえるよう、何としても彼女たちを説得しなくては」

山南さんの言葉を聞いた土方さんは、更に眉間に皺を寄せながらも私たちを庇うように山南さんの前へと立ちはだかった。

「……刀を納めてくれ。【私の闘争を許さず】。たとえ幹部だろうと、局中法度は絶対だろ?」

彼の言葉を聞いた山南さんは、少しの間土方さんを睨みつけていた。
だけどやがて、彼はあからさまに不本意そうに刀を鞘に収める。

「……で、一体何があったんだ?雪村たちが何かやらかしたのか。妹の方が刀を握ってるが……」
「隊の為、羅刹の狂気を抑える方法を探っていたのです」
「その為に、こいつらを斬ろうとしたってことか」
「殺すつもりはありませんよ。血を分けてもらおうと思っただけです。……先日の戦いで、我々は多くの羅刹を失いました。羅刹だけではなく一般の隊士も、同じく。今いる羅刹や、これから羅刹となる者をより有効に活用するにはーー何としても、狂気を抑える術を見出しておかなくてはなりません。聡明な君ならば、理解できると思いますが?」
「……さっきも言ったじゃねえか。新選組において、死闘は厳禁だ。どんな理由があろうと隊士同士の流血沙汰なんざ、許すわけにゃいかねえ」

土方さんの言葉に、山南さんは怪訝そうに顔を歪めさせていた。
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