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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「何が、仰りたいんですか……?」

何を言いたいのか分からない。
そう思いながら、私は思わず息を飲みながら山南さんに警戒の目を向けた。
脳は徐々に警鐘を強く鳴らしている。

「人を遥かに凌駕する力を持つ、鬼……。その鬼の身体に流れる血は、やはり、人の血よりも強い力を持っているのではないでしょうか?あるいは、羅刹の狂気を完全に抑える力があるかもしれません」
「それは……」

変若水について、私も千鶴も詳しい訳じゃない。
だから鬼の血が、羅刹の狂気を抑えるかどうかなんて分からないけれども、山南さんの言葉は理にかなっているようで発送が飛躍しているように思えた。

「なぜ……、そんなことが言えるんですか?」

千鶴は声を震わせながら、山南さんに質問する。

「自ら羅刹となる前から、そして羅刹となってからも……。この新選組で、薬についてずっと研究をしてきたのは私です。変若水の正体が一体何であるのかは、私にも未だにわかりませんが……生き血ではないかと推測しています。……恐らく、人では無い何者かの」
「……生き血」
「もしかすると異国にも、あなた方鬼のような生き物がいるのかもしれませんね」
「それって……」

確かに、鬼が日本だけにいるとは限らない。
同じような種族が異国にもいるかもしれない……そう考えていれば山南さんは音もなく間合いを詰めてきていた。

それに驚いて、私と千鶴は後退る。
私は慌てて片腕を広げて千鶴を庇いながら、刀へと目を向けた。

(どうしよう……山南さんの様子、やっぱりおかしい。だからと言って、刀を手にするのも躊躇う)

息を飲みながらも、山南さんへと視線を向けると彼の目の奥には興奮と狂気が滲み出していた。

「少なくとも……試してみる価値はあるはずです。貴方たちの存在で、我々羅刹隊ーーいや、新選組隊士全員を救うことができるのかもしれないのですよ?」
「なっ……」
「そんな、こと……」

できる可能性があるとは言いきれない。
そう思っていれば、山南さんは小さく口元に弧を描いていた。

「さあ……」

すると、山南さんは流れるような所作で刀を抜いた。
まさかの行動に、私は慌てて足で刀を自分側へと手繰り寄せるとすぐさま手にする。
そして柄に手をかけながら彼を凝視した。

明らかに正気を失っている。
こんなの正気がある人がする行動じゃない。
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