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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


そして斎藤さんは、ほとぼりが冷めるまでと土方さんのはからいで暫くは屯所を離れることになった。
今は紀州藩の三浦休太郎という方を警護をするため、天満屋に滞在していると聞く。

油小路の変ではかなりの変化があった。
事情を知らない隊士の方にとっては、かつての仲間であり同志との戦い。
多少事情を知る者には、その背後に薩長の動きや坂本龍馬暗殺やその為諸々の状況の変化。

全ての事情を知る幹部にとっては鬼たちの行動。
羅刹となってしまった平助君、そして沖田さんの病状の悪化。
そんな事もあってか、屯所の中は騒がしくなっていた。

「……することが、ないなあ」
「そうだねえ……」

うろうろとしていても、仕事が出てくる訳じゃない。
それどころか皆さんの邪魔になるからと、千鶴と共に私の部屋にいたけれども落ち着かない。
そう思っている時だった。

「……部屋に居てくれましたか」
「……山南さん?」

声もかけずに、山南さんが突然部屋に入ってきて思わず目を見張った。

「助かりますよ。昼間外に出られると、捜しに行けませんからね」
「山南さん……。起きていても大丈夫なんですか?」

千鶴はそう山南さんに聞くけれども、私はなんだ山南さんの様子がおかしい事に気がついた。
何処か興奮しているような、そんな気がして私は千鶴を自身の背中に庇うように立ち上がる。

「ええ。とてもいい考えが浮かんだもので、一刻も早く君たちに知らせたくて」
「山南さん、そう言う話ならば、近藤さんや土方さんにお伝えしたらいいのでは」
「……君たちでなければら駄目なのです。私の考えを、聞いていただけますね?」

山南さんは質問するように言っているけれども、その言葉には有無を言わせない圧を感じた。
やはり、山南さんの様子がおかしいと気付き、千鶴もそれに気がついたのか不安そうに私の着物を掴んでいる。

私は思わず、足元にある自身の刀へと視線を向けた。
何かをされるかなんて分からないけれども、山南さんの様子からして警戒した方がいい。
そう思っていれば、彼は私たちの答えを聞かずに話を始めた。

「……雪村君たち。貴方たちは鬼の一族だと、あの千姫という女性と千尋君も言っていましたね。そして、鬼という生き物も、筋力も胆力も人間より遥かにすぐれている。それは、先日屯所を襲撃した鬼たちの力を思い起こすまでもないことです」
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