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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


なんとなく、空気がきついなと思っていれば誰がが私の肩に手を置いた。
少しだけ驚いて振り向けば、そこには斎藤さんの姿があった。

「……斎藤さん」
「……御陵衛士は、これで終わる。平助を呼び戻すつもりなら、これが最後の機会になるだろう」
「……平助君!」

そうだ、平助君は今は御陵衛士。
そして御陵衛士は今回、伊東さんが暗殺されたら彼の遺体で誘き寄せて全滅させられる。
つまり、その場には平助君も来るかもしれない……。
私は目を見開かせながらも、土方さんへと声をけた。

「土方さん!」
「何だ?」
「平助君は、どうなるんですか?御陵衛士を斬るってさっき言ってましたが……」
「そりゃあもちろん、助けるに決まって……」

永倉さんが笑顔で、そう言った時だ。
土方さんは絶望する言葉で、永倉さんの言葉を遮った。

「ーー刃向かうようなら、斬れ」
「……え」

一瞬、頭の中が真っ白になった。
だって今、土方さんは【刃向かうようなら、斬れ】って言ったのだ。
その言葉が頭の中でぐるぐると回り、目眩さえ感じてしまう。

「斬れだなんて、そんな……」

だって平助君はかつての仲間。
それどころか、江戸から一緒にここまで来た仲間なのになんで土方さんはそんな簡単に言えるんだろう。

「嘘ですよね?だって平助君は、ずっと一緒に過ごしてきた仲間で……」

すると土方さんは、私を振り切るように立ち上がった。
そしてそのまま、何も言うこともなく私たちに背を向けると広間を出て行った。

土方さんは何も言わなかった。
それってつまり、嘘でもなんでもない……本気なのかもしれない。
そう思っていれば、それまで黙っていた千鶴は目を見開かせながら叫ぶように言葉を発した。

「本当に、平助君を斬ってしまうつもりなんですか!?一度隊を出た人なんてとう仲間ではないから、死んでもいいって……そう仰るんですか!?」
「千鶴……!」

叫ぶ千鶴を落ち着かせようとした時だった。

「そんな筈がないだろう!!」
「……近藤さん」
「……トシだって、本心では助けたいと思っているんだ。同じ志を持って江戸から上ってきた仲間を殺す命令を下して……平気でいられる筈がないだろう」

近藤さんは拳を血が滲んでしまうほどきつく握り締めていた。
それだけで、近藤さんも土方さんも本当は平助君を助けたいんだって分かる。
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