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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


斎藤さんは、伊東派のふりをしていただけ。
その事に嬉しいような何とも言えない気持ちになるけれども、やっぱり斎藤さんが新選組に戻ってきてくれた事が嬉しかった。

「なんだ。一君、僕に内緒でそんな楽しいことをしてたんだね」
「さっきは肝が冷えたぜ·····。近藤さんたちも人が悪いよ」
「極秘だったのでな。黙っていて、皆にはすまんことをしたなあ」

永倉さんの言葉に、近藤さんは本当に申し訳なさそうにしていた。
そして、皆斎藤さんが戻ってきてくれた事に嬉しそうにしていた時だ。
斎藤さんは真剣な眼差しで話した。

「安心するのは、まだ早い。この半年、俺は御陵衛士として活動を続けていたが、伊東たちは新選組に対し、明らかな敵対行動を取ろうとしている」
「敵対行動とは·····表現からして、穏やかではなさそうだね」
「伊東の奴は幕府を貶める為、羅刹隊の存在を公にしようとしてやがるんだ。……その為に、薩摩と手を組んだって話もあるな」

確か伊東さんは、羅刹隊の事を公にはしないと言っていたはずなのに。
まさかの裏切りに驚きながらも、もし羅刹隊のことを公にすれば、幕府の信用は失落してしまう。

幕府にとっても、新選組にとっても羅刹隊が明るみになることはかなりの危険。
しかも、場合によれば薩長がそれを戦の大義名分にして、戦をしかける事もありうる。

「そして、より差し迫った問題がもう一つ。伊東派は、新選組局長暗殺計画を練っている」
「新選組局長暗殺計画って……!?」
「局長……近藤さんを……!?」

新選組局長暗殺計画と聞いた近藤さんは、苦い表情を浮かべていた。
自分の暗殺の計画を練られていると聞いたら、こんな表情になるのは無理もない。

「御陵衛士は既に、新選組潰しに動き始めている。……坂本龍馬が暗殺された件は聞いたか?」
「ああ。なんでも、俺がやったとかいう話になってるらしいな」
「聞いてるんなら、話は早え。その噂を流したのは、御陵衛士の連中だ。紀州藩の三浦休太郎が、新選組に依頼して原田に殺させたってな。三浦には身に覚えがねえらしいが、噂を鵜呑みした馬鹿が俺たちを襲ってこねえとも限らねえ」

やっぱり、原田さんの鞘が落ちていたというのは悪意を持って流された嘘だった。
しかもそれが、御陵衛士たちがしていたなんて驚いて言葉が出ない。
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