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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第2章 新選組【共通物語】


「ぷっ……。あは、あははははは!」
「あの……。何も笑うことないじゃないですか……」
「一君相手に【殺してしまうかも】なんて、不安になれる君は文句なしにすごいよ。最高!それに千尋ちゃんも最高だね。女の子にしては相当肝が据わってるよ君」

褒められているのか馬鹿にされているのは分からない。
そう思いながらも、未だに笑っている沖田さんを見ていれば隣にいた千鶴は何か覚悟を決めた表情をしていた。

「……これは、私と千尋の腕を確かめるため、なんですよね?」
「ふうん……どうやら物わかりはいいみたいだね。君たちがそれなりに刀の使える人間だってわかれば、僕たちも君たちの外出を少しは前向きに考えるし?」
「刃に不安があるのなら、鞘を刀代わりに使うか、峰打ちで打ち込め。まずは、姉の方からこい」

斎藤さんのその言葉に千鶴は黙って小太刀を見下ろした。
そして何かを考えてから、直ぐに真っ直ぐに斎藤さんに向き直り、私は少しだけ後ろに下がる。
あまり近くにいたら、千鶴の邪魔になってしまう。

「……よろしくお願いします!」

千鶴が小太刀を構えると、斎藤さんは小さく笑って頷いた。
だが、千鶴が既に構えているというのに斎藤さんは刀の柄に手をかけたまま動かない。

まだ、抜かないつもりなんだ。
恐らく千鶴の動きを見ようとしているのか、それとも何か他に考えがあるのだろうかと斎藤さんを見ながら考える。

「行きます!」

千鶴は声を張り上げ、彼へ向けて大きく踏み込んだ。
峰を向けたままの刀が無防備な斎藤さんの右肩へと振り下ろされようとしていた。
だが、千鶴の小太刀の峰は斎藤さんに触れることはなかった。

「あ……」
「……すごい」

思わず、声が漏れた。
斎藤さんは一瞬のうちに、千鶴の刀を弾いてから千鶴の首に刃筋を突きつけている。

これが、新選組の幹部を務める人の腕前。
私や千鶴じゃとうてい比べ物にならない。

「師を誇れ。あんたの剣には曇りが無い」
「え……?」
「太刀筋には心が表れる。あんたは師に恵まれたのだろう」

そう呟くと斎藤さんは身を引いた。

「今の、は……」
「今のは居合……」
「これ、いい小太刀だね。ずいぶん年代物みたいだけど……」
「え?」

千鶴は沖田さんが自分の小太刀を持っていた事に気が付き、目を見開かせて驚いていた。
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