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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「……とはいえ、これで薩長側も戦をする大義名分がなくなっちまったし、今の調子で、このまま続いていくんじゃねえの?」
「将軍はそのまんまだし、徳川家が依然、日本で一番でかい大名家だってことは変わりがねえしな。薩摩の奴らが、何やら怪しげな動きを見せてやがるのが気になるが……」
「ま、幕府側が挑発に乗らなきゃ、どうってことはねえだろ」
「なるほど………」

永倉さんと原田さんの話を聞きながら、私と千鶴は小さく頷いた。
そして町の方へと視線向ければ、幕府や朝廷が色々変わる中で町の様子だけは変わらない。

楽しそうに笑う声、噂話をしている話し声。
商売する商人の声に呼び込みをしている旅籠や、遊んでいる子供たちの声。
いつも通りの平和な町に、私は少しだけ目を細める。

(人は、例え幕府や朝廷が変わろうとも……何かが変わるわけじゃないんだよね)

時代が変わろうとも、人が変わるわけじゃない。
それが少しだけ不思議に思いながらも、私は町の様子を眺めていた。
すると千鶴が、ぽつりと呟く。

「……永倉さんって、実はすごく政治にお詳しいんですか?」
「ひとつ聞いていいか?……今までなんだと思ってたんだ、俺のこと」
「げほっ!」
「なんで千尋ちゃんは噎せてんだ?」

千鶴の言葉に思わず噎せてしまう。
確かに、永倉さんが政治に詳しいことは驚いてしまったけど、千鶴がそれを素直に疑問に思いながら素直に聞いてしまうとは思わなかった。

「あ、えっと、それは……。じゅ、巡察を続けましょう。冬は、日が落ちるのが早いですし」
「ふ、ふふっ……けほっ、ふふ」
「ごまかしたな……。というか、千尋ちゃんも左之も笑ってんじゃねえ!!」


❈*❈*❈*❈*❈*❈*❈

坂本龍馬。
彼は大政奉還を主導したことで、その名前は広く知れ渡っている人物。
そして、薩摩や長州と繋がりもかなり深い土佐藩の浪人らしい。

一時期は、所司代や、見廻組に新選組までも血眼になって坂本龍馬を捜していた。
朝敵とされている長州藩と関わりが深いから、とお尋ね者ともなっていた彼だが、大政奉還を機に彼に手を出すなと上から命が下った。

(あまり、詳しい事情は知らないけど……かなり重要な人物なんだよね。坂本龍馬って人は)

そして、私が坂本龍馬という名を改めて聞いたのはある日のこと。
井上さんの口から聞くことになった。
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