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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


ー慶応三年・十一月ー


肌を刺すような寒さが訪れ、風が吹く度に思わず身震いしてしまう季節が始まった。
大通りを抜ける冷たい木枯らしに身を震わせながら、私と千鶴は原田さんの巡察に同行させてもらっていた。

「もうすっかり真冬ですね、原田さん」
「ああ。この時期の冷え込みは本当、厳しいなんてもんじゃねえよな。だか、今は昼だからまだましだぜ?寒い夜の巡察がどれだけ辛いかっつうとな……」

白い息を吐きながら原田さんは笑っていた。
確かによく、夜の巡察に行かれた隊士さんたちの『凍える!』『寒くて死んじちまう』と言っている姿をよく見る。
私と千鶴は夜の巡察は危険だからと、行ったことはないけど想像しただけで寒くなってきた。

手の冷えをましにしようと思い、手に息を吐きかけていれば千鶴も同じようにしていた。
これをすれば多少だけど、暖かくなる。

「何だ、千鶴と千尋、寒いのか?手でも繋いでやろうか」
「いえ、結構です」
「い、いえっ!これくらいの寒さなら大丈夫ですから……!」

私は思わず千鶴を引き寄せて、原田さんに警戒する目を向ければ彼は苦笑いを浮かべた。
すると千鶴はある方向を見て、誰かを見つけたようだ。

「……あれ?」

千鶴に釣られてある方向をみれば、向こうから永倉さんが歩いてくるのが見えた。

「よう、三人共!今日もいい天気だな!」
「……こいつだけは、寒さとは無縁だよな」
「ああん!?よりによって、その格好のてめえに言われる筋合いはねえぞ!」
「……二人共、同じような格好ですけどね」

原田さんも永倉さんも、胸元を大きく開けていて何度も冬の季節の時に『寒くないのかな』と思った。
それにしても、言葉こそぶっきらぼうだけど本当に二人は仲がいいなと感じる。

「何だよ、千鶴ちゃんも千尋ちゃんも、そんなににやにやして?」
「そりゃ、おまえがいつも通りの間抜けな面さらしてるからに決まってるだろ」
「違いますよ!?」
「ち、違います!えっと、その……前もこうして、巡察中、他の隊士さんにお会いしたことがあったのを思い出して」

千鶴は否定しながら、そう言葉にした。
そういえば前も、沖田さんの巡察に同行した時に平助君にあったり、南雲さんに会ったり……。
そう思ったところで私は考えるのを辞めた。

「あの時は確か、沖田さんと平助く……」
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