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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


土方さんの部屋に来た理由を忘れていた。
私は慌てながら、自分の横に置いていたお盆を手にすると土方さんの元へと差し出す。

「土方さん、また朝食食べていませんでしたよね。ご飯とお味噌とお漬物だけですけど、持ってきたので食べてください」
「……今は必要ねえ。昼飯の時間には仕事も終わる」
「そう言って、前にお昼ご飯食べなかったじゃないですか!」
「今日はきちんと食うから、それは持って帰れ。今は食べる時間もねえんだよ」

土方さんの言葉にむっ、としていれば彼はため息を吐きながら少しだけ私の方へと視線を向けた。

「ちゃんと、昼飯は食う。その時に朝飯の分までたらふく食う」
「……本当にですか?」
「本当だ、本当だ。だから、それはお前が食っちまうか新八にでも食わせてろ」

本当にお昼ご飯は食べてくれるのだろうか。
かなり疑わしいけれども、今日は土方さんの言葉を信じることにした。
土方さんの言う通り、このご飯は永倉さんか相馬君か野村君に食べたもらおう。
そして、私はある事を思った。

「土方さん、何か食べたいものとかあります?」
「聞いてなかったのか?昼飯時まで食う暇がねえ」
「それは分かっています。ただ、今日のお昼は私と千鶴が炊事当番なんで、何か食べたいものがあればそれを作ろうと思いまして」

私の言葉に彼は少しだけ笑った。
さっきまで不機嫌そうにしていたのに、何故か急に機嫌よく笑っていて私へと視線を向けた。

「……俺の希望通りにしちゃあ、他の連中が怒るんじゃねえか?」
「その時は私が責任を持って怒られます。それに、何時も頑張られている土方さんに、好きな食べ物を食べてもらって少しだけでも疲れをとってほしいですから」

好きな食べ物を食べたからといって、疲れが絶対に取れるとは限らない。
だけど、少しは変わるかもしれないと思って土方さんはどんな食べ物を言うのだろうと思いながら、私は彼をじっと見ていた。

すると、土方さんはおかしそうに目を細めながら私を見ていた。
口元は僅かに緩んでいて、何時もより柔らかい表情をしながらため息を吐く。

「食い意地の張った発想だが、まあ悪い気はしねえか……」
「でしたら、何が食べたいか教えてください」
「俺の希望を聞いてから、【やっぱりできない】とか言うのは許さねえぞ?それでも聞きてえか?俺が唸っちまうような料理、出せるもんなら出してみろ」
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