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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


目の前にいる山南さん、その血を求め続ける羅刹だということを思い出したのだ。
だけど山南さんは気にした様子はなく、ただ肩をすくてるだけ。

「ええ、確かに化け物です。そのままではそう言われても仕方ない。ですが……現在は研究の成果もあって、吸血衝動もある程度抑えられています」
「それは、本当ですか……!?」
「吸血衝動を、抑えられているんですか……!?」
「雪村君たちも見たはずですよ。先日族を撃退したときの、統制が取れていた彼らの姿を」
「言われてみれば……」

風間が屯所を襲撃したとき、山南さんは羅刹隊を引き連れていた。
その時彼らは狂うこともなく、きちんと統制が取れていたのを私は見ている。

私たちが初めて見た羅刹とは違っていた。
彼らは人を見境なく襲い、斬り殺してその血を啜っていた。
正しく化け物という言葉が似合う程の存在だったけど、昨日見た羅刹はそうじゃない。
理性をきちんと保っていた。

「もちろんまだ完全とは言い切れません。吸血衝動衝動も昼夜の逆転も残っている。しかし、有効なら実証結果がいくつか出ているのは事実。今後はそれを突き詰めていくつもりです。……そのためにも綱道さんが、見つかればありがたいのですがね」
「綱道……?誰ですか、それは」

名前を聞いた相馬君は怪訝そうな表情を浮かべる。
そんな彼に、千鶴はそっと口を差し挟んだ。

「ーー雪村綱道は、私と千尋の父です」
「正確に言えば、育ての親……ですね」
「うん。そして、この新選組に、変若水をもたらした人でもある」
「雪村先輩たちの、お父上が……!?」
「雪村君たちが性別を偽ってまで新選組にいるのは、それが理由です。私たちは行方をくらました綱道さんを、彼女たちの協力を得て捜しているのですよ」

相馬君は暫く黙り込んでしまった。
羅刹や変若水、そして私たちの関わりを聞いて、明らかになった事実を確かめるように考えているようだ。

「……雪村先輩たち。ひとつ聞きたいことがあります。変若水に携わったのが、貴方たちの父、綱道さんだとして……。先輩たちはお父上を捜してどうなさるつもりですか?」
「……まずは、父に会いたい」
「……私も、千鶴と同じです」

私たちが京へとやってきた理由は元々、行方知れずになっていた父様を探すためだった。
そして一時的に新選組へ身を寄せることになり、協力する事になった。
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