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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「さて、初めましてと言えばいいのか、お久しぶりですと言えばいいのか……。先日、会ったときは戦場でしたし、あなたとまともに話すのは初対面以来ですね。相馬主計君。まさかあの時の少年が新選組に入って、近藤さんの付き小姓になるとは思いもしませんでしたよ」
「……俺もです。ですが今はこうして、新選組隊士の一人としてここに居ます」

山南さんの瞳は相変わらずどこか威圧感を感じる。
そう思っているのは私だけじゃないようで、相馬君は息を時折飲み込みながら山南さんを見ていた。

「俺が入隊したときは、山南総長が亡くなられていたと聞いて驚いたんですが……」

相馬君は山南さんの姿をじっと見つめている。
そんな彼の視線を、山南さんは面白がるように冗談めかして微笑んでいた。

「残念ながら、足は生えていますよ?ある意味幽霊のようなものではありますが」
「し、失礼しました!」
「山南さん、あまりからかわないであげてください……」
「相馬君、かなり真面目な子なんですから……」

私と千鶴が抗議の言葉をあげれば、山南さんはまた面白そうに笑っていた。

「ほんの冗談ですよ。雪村君たちも、素直な後輩ができて良かったですね」

くすくすと面白そうに笑う山南さんに、思わずため息をはいてしまう。
すると彼は笑い終えると、私と千鶴へと視線を投げてきた。

素直な後輩。
確かに相馬君は素直すぎるから、何を考えているのか凄く分かりやすい。
特に千鶴と一緒にいる時は何時も以上にわかりやすいから、見ていて面白いのは確か。

「さて、近藤さんと土方君からは、いろいろと聞いています。なんでも、相馬君は雪村君たち共々、羅刹隊の世話係を任されたそうですが」
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそ。しかし世話と言っても、取り立てて気を遣う必要はありません。君の仕事は、食事や洗濯の用意。あとは時折買い物を頼むぐらいですから」
「それだけ……ですか?」

仕事はそれだけだと知った相馬君は、少しだけ拍子抜けしたような表情をする。
そんな彼に、山南さんはまた揶揄うように笑った。

「ふふ、ひょっとして、血でも吸われると思いましたか?」
「山南さんが言うと冗談になっていない気がするんですが……」
「……山南さん。あまりからかわないであげてくださいって……」

千鶴の言う通り、山南さんが言うと冗談に聞こえなくなる。
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