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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


やっぱりどう見ても緊張している。
そう思っていれば、耐えかねたように相馬君は口を開いた。

「緊張ではありませんが、前に山南総長に会ったときはあのような状況でしたから。改めて顔を合わせると思うと、どうも身構えてしまって」
「先日はゆっくり話をするとか、そんな状況じゃなかったものね」
「相馬君は怪我もしていたし、山南さんも直ぐにお部屋に戻られていたから……」
「はい。風間という鬼との戦いに羅刹。いったい何が起きているのか、ついていくので精一杯だった……」

相馬君はあの日、千鶴を風間から守るために傷だらけになっていた。
千鶴から聞けば、彼は殺されそうになっても身を呈して千鶴を守っていたらしい。

今は傷もだいぶ塞がっているらしいと、千鶴から聞いたときは安堵した。
だけど、千鶴を守ってくれたのは嬉しかったけど大怪我をするほど、殺されてしまうほどに身を呈して守るとは思わなかったから驚いた。

(それほど、千鶴を想ってくれてるのかな……)

そう思っていれば、千鶴はなんとも言えない表情で相馬君を見ているのに気が付いた。
すると相馬君は千鶴の目線に気が付いたのか、千鶴に声をかける。

「どうかしたんですか、先輩?」
「……ううん、なんでもない。それより相馬君。そろそろ山南さんが来るけど、心の準備はいい?」
「はい。……でも、まさかこの俺が羅刹隊の人たちの世話を命じられるとは思わなかった」

羅刹隊は新選組の暗部。
外部は勿論、同じ新選組の隊士にまで徹底的に存在を秘匿されている羅刹隊。
だから掃除や洗濯、食事やその他諸々はこれまで事情を知っている私と千鶴が二人でお世話をさせてもらっていた。

だけど、相馬君も羅刹について知った。
その為今後からは相馬君、そして野村君も羅刹隊のお世話のお手伝いに加わる事に。

「しかし、世話と言っても、何を手伝えばいいんですか?」
「詳しい話は、直接、山南さんに聞くのが早いと思う」
「そうだね。それに、たぶんもうじき来るはずと思うから……」

なんて言葉を呟いた時だった。

「夜分遅くに失礼します、雪村君たち」
「山南さん。お待ちしていました」

千鶴の言葉に山南さんは小さく頷いてから、彼は相馬君へと笑みを浮かべる。
だけど山南さんの瞳の奥には、相馬君を下げるようなものを感じた。
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