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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


昨晩の騒ぎが原因なら私たちのせいだ。
もし風間千景が来なければ、あんな騒ぎがなければ西本願寺からも『出ていって欲しい』という感じに言われる事はなかったはず。

「申し訳ありません。私のせいで、皆さん方にご迷惑をおかけして……」
「申し訳ありません……。あの騒ぎは私たちのせいで」
「いや、そうではなさ。元々、無理難題を言ってここに押しかけたのは我々なんだからな」
「しかし、どうするのですか?屯所移転となると、また候補地選びからやり直しになりますが……」

あの時は伊東さんが『西本願寺はどうか』と言ったので直ぐに決まった。
だけど今回も直ぐに屯所移転地が決まるかどうか分からない。
そう思っていれば、近藤さんが少し難しそうな顔をされた。

「それについてだがな……。移転先の敷地も屯所も、全部、西本願寺が用意してくれるそうだ」
「ええっ?」
「敷地も屯所も?」
「ほう、そりゃあすごい。よっぽど我々に出て行ってほしいんだね」
「まあ、ここは素直に受け取っておいた方が良きそうだな。また、忙しくなるぞ」

そうして西本願寺は新選組の新しい屯所、費用全額負担で建ててくれることなった、新選組の三ヶ所目の屯所となる、不動堂村屯所が完成することに。
隊士数十人が一度に入浴できる大きなお風呂場や、木々の匂いがする真新しい道場などもある。
そのためか、入隊したばかりの隊士さん達は色めき立っていた。

そして夏を迎える時期。
新選組と私たちは二年と少しの間を過ごした西本願寺を後にして、新しい不動堂村屯所へと移転した。


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ー慶応三年・六月中旬ー


私は千鶴が新たに与えられた個室にて、相馬君と千鶴の三人と共に来客が来るのを待っていた。
その間、相馬君は顔を強ばらせながら緊張した面持ちを見せている。
そんな彼を見かねた千鶴は相馬君に声をかけた。

「……あの、相馬君。そんなに緊張しなくても大丈夫だから」
「……うん。そこまで緊張しなくても平気だよ?」
「べ、別に緊張などしてません!」
「そう……?」

どう見ても緊張しているようにしか見えないけど……。
そう思ったけれども、彼のためにもあえて口にすることは無く千鶴と共に苦笑を浮かべた。

相馬君は『緊張などしてません』と言っていたけれども、彼はさっきから落ち着かない様子で室内をうろうろとしている。
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