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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


ふすまが開いて、珍しく機嫌が悪そうにしている近藤さんが入ってきた。

「おや勇さん、おはよう。……どうしたんだね?機嫌が悪そうだが。元々いかつい顔なのに、それじゃ迫力満点だ。雪村君たちも、怖がっているじゃないか」
「え!?いや、そんな……」
「そんな、私は別に……」
「別に、遠慮する必要はねえぜ。怖いなら、素直に怖いって言っとけよ」
「怖くありませんから!」
「そうです!」

確かに、いかついお顔をされているとは思ったけれど怖いとは思わない。
そう思いながら慌てて否定した。

「……それは、すまなかったな。他意はないから、許してほしい」

不機嫌な表情は消えたけれども、近藤さんは真顔のまま私たちに深々と頭を下げる。
何時もなら朗らかに笑いながら、『おはよう』と言う近藤さんなのに、今日はどうされたんだろう。

彼の様子がいつもと違う。
それに少しだけ不思議に思っていたのは私たちだけでなく、井上さんや原田さんたちも不思議そうに彼を見ていた。

「あの、お顔上げてください」
「謝らなくても大丈夫ですので。それより、何かあったんですか?」
「うむ。……すぐにわかることだから、伝えておこう」

近藤さんは表情を変えることなく、前置きをしながら広間に集まっている幹部の方々全員に告げた。

「西本願寺から、これ以上我々がここに留まるのは困ると言ってきた」
「それはつまり、我々にここから出ていけと……そういうことですか」
「いや、さすがにそこまで直接的な物言いではなかったが」
「まあ、いつかはそうなるんじゃないかと思ってはいたがね……。いやはや、しかし……困ったねえ」

元々、西本願寺は尊王派であり長州藩に肩入れをしていたり攘夷派の浪士たちを匿っていたりしていたと聞いている。
そんな彼らにとっては新選組は招かれざれる客。

そして、西本願寺には無理矢理引っ越してきたようなもの。
彼らが私たちを嫌がるのはよく分かるし、この場を去って欲しいと思う気持ちもわからないわけじゃない。
そう思っていれば、山崎さんは困ったような表情をしながら近藤さんに尋ねた。

「それにしても、急な話ですね。まさか、昨晩の騒ぎが原因ですか?」
「ああ。ここであのような騒ぎを起こされては困るということらしい。察するに、長州や薩摩……その辺りからも何か言われているのだろうな」
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